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へろへろのおすすめ本

へろへろのおすすめ本
図書館に時々出没するかえるのへろへろ。
住処は大学横の田んぼだという噂(田村山とも!?)。
ふらりとやってきては豆知識をつぶやくのが趣味なのだとか。
図書館公式キャラクターであるへろへろ隊長のもと、隊員である司書が本をおすすめしていく。
おすすめ本はカウンターにあります。
《 2020年度 》

2021.1

『書店本事 台湾書店主43のストーリー』

郭怡青文、 欣蒂小姐絵、小島あつ子他訳/サウザンブックス社
2019年発行/024.224カ


 日本から比較的行きやすく、海外旅行先でも人気の国、台湾。
 グルメや有名な観光スポット巡りなども良いですが…本屋さんに注目されたことはありますか?

 台湾には、大手資本から独立した、カフェを併設したり雑貨を販売したりと、店主の個性が光る独立書店と呼ばれる個人経営の書店がいくつもあります。日本と同じく読書離れが進み出版不況にある台湾ですが、そんな中、読書活動を推進する場、書店に集う人々が楽しむ地域交流の場として、物を売るだけではなく書店という一つのプラットフォームを通じて人々の生活を豊かにするべく日々奮闘し活力あふれる店主たち。そんな台湾の書店文化、そして歴史や社会をのぞいてみませんか?

 本書は老舗の書店から新しい書店まで、台湾全土に点在する43の独立書店の店舗情報、店主プロフィールやインタビュー等が記載されています。
 全編にわたって店内のカラー写真やイラストが掲載されていますが、登場する書店ごとにQRコードが付けられており、台湾の映画監督・侯(ホウ・)季(チー)然(ラン)によるドキュメンタリー映像集『書店の詩(うた)』の映像にリンクしています。活字・静画・動画の3点セットで読者を魅了し、楽しませてくれます。

 もともとは台湾で2014年に発行されていましたが、翻訳出版を目指し、インターネットを通じて想いに共感した人や活動を応援したいと思う不特定多数の人から資金を募るクラウドファンディングが2018年まで実施されました。そしてサウザンブックス社により2019年にフルカラーで翻訳出版されました。
 言葉や文化の壁を越え、この本がたくさんの人に愛されていることが分かります。

 気軽に旅行に行くことはまだ難しいかもしれませんが、本と映像で「行ったつもり」になれる台湾書店巡りの旅をご堪能下さい!

(へろへろ隊員 いわしま)

2020.12

『男の子でもできること みんなの未来とねがい』

国際NGOプラン・インターナショナル文,金原瑞人訳
西村書店/2020年発行/367.6 コ


 「世界に生きる子どもたち」シリーズの写真絵本を開くと、ジンバブエやザンビア、ギニアやネパールなど、様々な国の子どもたちの写真が並んでいます。
 この子たちはみんな男の子。色々な国の男の子たちです。彼らは、生まれた時からいろんな夢を持っています。その夢を叶えるために、「自分でやるぞ」と決めたことができます。
 男の子に生まれてよかったと思うことは、毎日学校に行って勉強ができること。自分の夢を叶えることができること。その環境が許されていること。
 女の子は、家の仕事を手伝わなくちゃいけないから、学校には行かせてもらえません。勉強をしたいのに「女の子」だからというだけで、それができない国があります。自由に声をあげることができない国があります。
 でも、男の子は男らしく、仕事をして勇敢になれと言われます。だけど大人じゃないから、時々怖くなることもあります。男の子だから、家族を養わないといけないと言われます。家の跡取りとして責任と重荷を背負わされます。
 
  本当は、大好きな妹と一緒に学校に通いたい。
  本当は、お母さんやお姉さんに望みを声にしてほしい。
  男の子も女の子も、言いたいことが言えて、好きなものを好きと言える世界がいい。
  自分の人生を自分で選べるようになってほしい。

 男の子と女の子の扱いが違う国がたくさんある中で、どちらも自由に生きていくためには何ができるのでしょうか?男の子も女の子も、人はみな同じ権利を持っています。誰もが自分の意見を自由に言えて、やりたいことができる世界にするため、男の子は何ができるでしょうか?そして女の子は?
 この本は、誰もが幸せに生きるための大切な問いを投げかける写真絵本です。この本を第一歩として、自分にできることを考えてみることが、みんなの権利を守ることかもしれません。
 同じシリーズに『わたしは女の子だから』という本があります。どちらも権利について考えることができる本です。ぜひ両方を手にとって読んでみてください。

(へろへろ隊員 やまだ)

2020.11

『ありがとう。の本』

竹本聖著/ぶんか社
2001年発行/911.56 タ


 2020年、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し、私たちの生活に大きな影響を与えました。人類が過去に経験したことがない事態に陥り、ソーシャルディスタンス、消毒、マスクの着用等が強いられるようになりました。また、「コロナうつ」「コロナ疲れ」等という言葉も生まれ、メンタル的に憂鬱になったり体調不良を感じてしまう人も…。
 そんなコロナ禍の今だからこそ、今までの日常のありがたさを再認識したという人も多いのではないでしょうか。

 この本は、たくさんの「ありがとう」が詰まった、読んでいるだけであたたかな気持ちになれる一冊です。
 本の中から一つの「ありがとう」を紹介します。

日頑張って働いてくれて、ありがとう。
「静かな愛の力」
カゼをおして会社に行ったり。
疲れているのに食事をつくってくれたり。
どんなにつらいときも静かな愛で、
当たり前のようにそっとずーっと
私を守ってくれてありがとう。
あなたのおかげで、
私は幸せな毎日を送ることができます。

 私たちはみんな、家族や友達、そして目に見えないたくさんの人たちに支えられて生きています。
 頑張って働いてくれる人がいるからこそ、毎日生きていける。それは当たり前のことかもしれませんが、ついつい忘れてしまいがち。「ありがとう」は言った方も言われた方も優しい気持ちになれる言葉です。直接伝えることが難しい人に対しても、感謝の気持ちを忘れずに日々を過ごしていきたいですね。
 見逃してしまいそうな様々な「ありがとう」に気付かせてくれる素敵な本ですので、ぜひ読んでみてください。

(へろへろ隊員 いわしま)

2020.10

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

ブレイディみかこ著/新潮社
2019年発行/376.333 フ


 この本の著者は、イギリスのブライトンに住む、イギリスで保育士をしていた人です。夫はアイルランド人でトラックの運転手をしていて、中学生になったばかりの息子がいます。この本は、その息子が、進学した中学校で様々な問題に直面しながらも成長していく姿を母親の視点で描いています。
息子は、裕福で教育熱心な家庭の子が多く、市の学校ランキング1位の公立カトリックの小学校を卒業します。その学校で生徒会長もした「よい子」の息子は、進学先にカトリッの中学校ではなく、家の近くの中学校を選びます。その中学校は、現在は学校ランキングが真ん中くらいまで上昇しているけれども、最近までは底辺中学校であった学校です。そのことに興味を持った著者と共にその学校に見学に行ったあと、息子は仲のよいクラスメートもそこに行くということもあって、その学校を選んだのです。
その元底辺中学校は、貧富の差、社会的階層、人種、ジェンダー問題など、日本では考えられないくらいの多様性があるバックグラウンドを持つ生徒が集まっていて、そのことによる問題が日常的に発生しています。息子自体も東洋人の血を引いていることで差別感情をぶつけられています。そのようななかで、それらの問題に悩み、傷つきながらも真摯に向き合い、そして常に周囲に思いやりの気持ちを持って日々を過ごしていく息子の姿に感動を覚えます。
この本のタイトルは、その息子が中学生になったときにノートの隅に書いていたものを著者が見つけてタイトルとしたものです。
この「悲しみ」や「気持ちがふさぎ込んでいる」を意味するブルーが一年半後のこの本の最後には、「いまはどっちかというとグリーン」となります。そして、彼はそのグリーンは「未熟」「経験が足りない」を意味していると言います。
 この本は息子のことを描いたものですが、その息子と共に考え、常に支えている著者の生き方の魅力も強く伝わる本です。

(へろへろ隊員 ひらい)

2020.9

『かいけつゾロリのドラゴンたいじ』

原ゆたか著/ポプラ社
1987年発行/913.6ハ

ゾロリシリーズの最初のお話です。
ゾロリシリーズとは、擬人化された動物たちが暮らす世界を舞台に、いたずらの王者を目指し修行の旅に出たキツネの主人公ゾロリと、双子のイノシシのイシシとノシシが繰り広げる、大冒険の物語です。
1987年に発行されてから30年以上経ちますが、ゾロリシリーズは今なお小学生を中心に大人気の児童図書です。

物語は、ゾロリと後にゾロリの弟子となるイシシとノシシと出会う所から始まります。
そして、ある国のお姫様とアーサー王子の結婚式を明日に控えていることを知ったゾロリは、国の王子となるため2人の結婚を邪魔することにしました。そのためにゾロリとイシシとノシシたちは早速手を組み、作戦を立てます。
結婚式当日。なんとドラゴンが現れ、お姫様をさらって行ってしまいました。
お姫様を救うため、ゾロリとアーサー王子がドラゴンに立ち向かう!
ドラゴン退治のための数々の武器が登場しますが、ひとつひとつ見ていくと、どれもユニークでへんてこなものばかりです。
あの手この手でアーサー王子を窮地に追いやる意地悪でずるいゾロリたち。
ドラゴンを退治し、無事にお姫様を救い出すことはできるのでしょうか。
そして結婚の行方は…?

ゾロリたちは、短時間でのひらめき力と行動力がすごいです。いつも悪いことを企んでいたずらをしかけては失敗してしまいますが、どんなことがあっても、くじけずに前向きなその姿に学ぶことは多いはず。
ゾロリたち登場人物が読者に語りかける、いわゆるメタフィクション発言が目立ち、シリーズを通して読者を飽きさせない工夫がいくつも見られます。
児童図書ですが、大人が読んでも楽しめる作品だと思います。
これから長く続くゾロリの旅の最初の一幕をぜひ読んでみてください。他のゾロリシリーズの作品もオススメです!

(へろへろ隊員 いわしま)

2020.8

『のっぺらぼう』

杉山亮作,軽部武宏絵/ポプラ社
2010年発行/E カル
 
 暑さを吹き飛ばすこわ~いお話をひとつ…。

 むかしむかしの おはなしです。
 さとの はずれに
 ひとりの おとこのこが おりました。
 あるひの ゆうがた、
 おとこのこの ははおやが いいました。
 「おまえ、やまに いって、
  たきぎを とってきておくれ。
  たのんだよ。
  でも、それが すんだら
  すぐに かえってくるんだよ。
  やまは くらくなると
  こわいものが でるからね」 (本文より)

 約束を忘れ、すっかり遅くなってしまい、慌てて山を下りるおとこのこ。
 その帰り道で出会ったのは…。

 泣き続けるあかんぼう、その母親、お侍、和尚さんと次々に襲ってくるのっぺらぼうの人々。おとこのこをのっぺらぼう仲間にしようと追いかけてきます。
 お話のテンポがよく、独特の絵がさらに怖さを倍増します。
 言いつけを守らなかったおとこのこは、無事家にたどり着けるのでしょうか?
 たどり着いた時、おとこのこの母親の顔は…?

 日本には、出会った人や知っている人の顔がのっぺらぼうになる物語がたくさんあります。
 『さるかに のっぺらぼう ほか』(松谷みよ子文,南伸坊絵/講談社)や『のっぺらぼう(ちくま文学の森4 変身ものがたり)』(子母沢寛著/筑摩書房)など、他の解釈や伝承の物語も合わせてお楽しみください。
 読んでいるひと時…暑さを忘れるかもしれません。

(へろへろ隊員 やまだ)

2020.7

『橋をかける-子供時代の読書の思い出』

美智子著/文芸春秋
2009年発行/019.5 ミ
 
 今振り返って、私にとり、子供時代の読書とは何だったのでしょう。
 何よりも、それは私に楽しみを与えてくれました。そして、
 その後に来る、青年期の読書のための基礎を作ってくれました。
 それはある時には私に根っこを与え、ある時には翼をくれました。この根っこと翼は、私が外に、内に、橋をかけ、自分の世界を少しずつ広げて育っていくときに、大きな助けとなってくれました。        
(本書p36より引用)

 これは、美智子上皇后が皇后時代の1998年に、インドのニューデリーで開催された国際児童図書評議会(IBBY)第26回世界大会の基調講演のなかで話された言葉です。この講演は当初、ニューデリーで実際に行われるはずだったのですが、政治的な理由で直前に大会に参加できなくなり、ビデオテープの上映による講演となりましたが、その場にいた人々に大きな感銘を与えたといいます。
 この講演では、自分の子供時代の読書が、子供時代に、そしてその後の人生の中でどのような意味を持ってきたかということが、穏やかな語り口で語られているのですが、それが、いかに大きな意味を持っているかがとてもよく伝わってきます。
 この数か月ほどの間に子供たちのデジタルネットワークの環境の整備が大きく進んできました。そして、これからさらに加速されていくことでしょう。このような環境の中で生きていく子供たちだからこそ、冒頭に掲げた文章の中にあるような翼と根っこを読書によって手に入れてほしいと願ってしまいます。本と子どもに関心のある人には一読をお勧めします。
 この講演の後、有名になった作品があります。新見南吉の「でんでんむしのかなしみ」です。自分の背中の殻のなかに悲しみがいっぱい詰まっていることに気づいたでんでんむしのお話です。絵本にもなっていますので、こちらも読んでみてください。

(へろへろ隊員 ひらい)

2020.6

『バムとケロのにちようび』

島田ゆか作・絵/文渓堂
2005年発行/Eシマ
 
 まず、この絵本の内容をご紹介します。
 せっかくの日曜日なのに、外ではあいにくの雨が降っています。サッカーも砂遊びもできず、窓の外を眺めながら、犬のバムはガッカリしています。家で本を読もうと思うバムですが、カエルのケロちゃんが散らかしたままの部屋を片付けなければ、落ち着いて読書もできません。一生懸命に掃除をして、ようやく部屋はきれいになったのですが、どろんこびちゃびちゃのケロちゃんが帰ってきました。また部屋が汚れてしまいました。バムは呆れながらもケロちゃんを風呂に入れ、それからふたり一緒に掃除のやり直しです。そして、ようやく部屋がきれいになると、次は読書のお供のおやつ作りです。生地をこねて型を抜いて、それから油で揚げればおいしいドーナツの出来上がり。あとは読む本を選ぶだけ。バムは持っている本はどれも読んでしまったので、屋根裏部屋から本を探すことにするのでした。屋根裏部屋には古いものがたくさん。おじいちゃんが大切にしていた飛行機の本を探し始めます。でも、そこには蛾にねずみ、虫がうじゃうじゃ。バムはいつになったら、落ち着いて本が読めるのでしょうか。

 隅々まで細かく描かれた絵がとっても魅力的で、ソファの足がまさに足の形をしていたり、バスタブが犬の形だったりと、ユーモアたっぷりのインテリアも、見どころのひとつです。
 ソファの後ろの壁に飾られている額の絵も、実はページが進むごとにちょっとずつ変化していたりします。ストーリーの本筋とは関係ない部分でも遊び心が満載。
 開くたびに新たな発見があるからこそ、何度もじっくりと、隅々まで見てみたくなるのでしょう。私も今回この絵本を読み返してみて、「こんなところにこんな絵が描かれていたなんて!」と、以前は気がつかなかったことにたくさん気づくことができました。
 新型コロナウイルスの影響で、気軽に外出ができない状況が続いています。
しかし、この絵本に登場するバムとケロちゃんのように、家にある本を読み返してみたり、掃除をしてみたり、料理やおかし作りをしてみたり…様々なことに挑戦することで、新たな楽しみが見つかるかもしれません。
 外に出られず憂鬱な気分…だけどおうちの中でドタバタの大騒ぎの一日!面倒見のいい落ち着いたバムとおてんばで自由奔放なケロちゃんの対照的な様子が微笑ましい絵本です。

(へろへろ隊員 いわしま)