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へろへろのおすすめ本

へろへろのおすすめ本
図書館に時々出没するかえるのへろへろ。
住処は大学横の田んぼだという噂(田村山とも!?)。
ふらりとやってきては豆知識をつぶやくのが趣味なのだとか。
図書館公式キャラクターであるへろへろ隊長のもと、隊員である司書が本をおすすめしていく。
おすすめ本はカウンターにあります。
《 2019年度 》

2019.12

『TOKYOオリンピック物語』

野地秩嘉著/小学館
2013年発行/780.69 ノ

 2019年ももう終わり。来年2020年は東京オリンピックが開催されます。そこで今回は東京オリンピックに関する本をご紹介します。

 この本は東京オリンピックを題材としていますが、選手たちや競技に焦点を当てたものではありません。グラフィックデザイナー、記録映画を撮った監督、選手村で1万人の選手の食事を作ったシェフ、民間警備会社の創業者など、これまで取り上げられることのなかった、1964年の東京オリンピックを裏で支えた人たちを取材しまとめられたノンフィクション作品です。

 第一章の「赤い太陽のポスター」の内容をご紹介します。ここでは、東京オリンピック公式ポスターの写真撮影の裏側が描かれています。
撮影技術が限られている時代、選手たちの迫力のあるスタートダッシュの撮影をしようとしますが、人物が動き出す瞬間を捉えるのに一苦労。
選手たちが最も引き立つように、昼間は観客席が映るからと、暗闇で撮影を行い、東京中から集めたストロボの光の量や角度の調節、カメラの設定やシャッターを切るタイミングなど、試行錯誤するカメラマン。
 そうした苦労の中出来上がった、強く美しいデザインのポスターは日本中ありとあらゆる場所に掲示されました。それは人々に「東京オリンピックがやってくる」ことを伝え、同時に日本復興ののろしでもありました。海外でも大きな反響を呼び、グラフィックデザイナーである亀倉雄策氏は世界のトップレベルに到達しました。
 そのときのポスターや当時のオリンピックの様子などを写した写真も掲載してあります。

 どの章でも、戦後20年足らずという状況の中で様々な人たちが常識にとらわれずに新しい物事を創造する過程、そして「日本を盛り上げよう、世界に日本を知ってもらおう」と尽力する姿が伝わってきます。2020年の東京オリンピックも、成功するために日々尽力されている人達がいるのだと思えば、また見方が変わってくるのではないでしょうか?
 2020年の東京オリンピックに向けて、ぜひ読んでみてください。

(へろへろ隊員 いわしま)

2019.11

『クリスマスものがたり』

ブライアン・ワイルドスミス作・絵,曽野綾子訳/太平社
1990年発行/E ワイ

 11月になって、あちらこちらでクリスマスの飾り付けが始まっています。12月25日のクリスマスは、キリスト教では、神がこの世に遣わされた救世主イエス・キリストの誕生日として祝われていますが、その誕生のいきさつは、キリスト教の教典『聖書』に記されています。そこに年月日は記されてはいないのですが、誕生の様子は次のように描かれています。

 古代ユダヤのヘロデ王の時代にガリラヤの町ナザレに住むマリアのもとに天使ガブリエルが訪れ、神の子を身ごもったことを告げる。そしてマリアが臨月を迎えた頃、住民登録のために夫ヨセフとともに出かけたベツレヘムでマリアはイエスを生む。ベツレヘムでは宿がどこも満室だったため、マリアがイエスを生んだのは馬小屋の中で、イエスは飼葉桶の中に寝かされた。そこに、大軍を率いた天使によって救世主の誕生を知らされた羊飼いたちや、特別に輝く星に導かれた占星術の学者たちも贈物を持って訪れ祝福する。

 この絵本は、『聖書』のイエス・キリストの誕生の話をふまえ、マリアがベツレヘムに向かうときにお母さんロバに乗って行ってしまったため、あとに残された赤ちゃんロバとその世話を頼まれた少女レベッカを主人公にしています。お母さんロバがいなくなって悲しくて仕方のない赤ちゃんロバをレベッカが連れてマリアたちの後を追い、イエスが誕生した馬小屋で会うことができるというお話しです。この絵本では、赤ちゃんロバとレベッカがとても暖かく優しい絵で描かれている一方、イエス・キリスト誕生の物語の各場面は美しく華やかに描かれ、その両方の絵と物語を楽しむことができます。
 クリスマスに関連する絵本はたくさんありますが、その中で、「キリスト誕生の物語」を描いたものはそれほど多くはありません。この絵本は、素晴らしい絵を楽しみながら、キリスト誕生の物語も知ることのできる一冊です。

(へろへろ隊員 ひらい)

2019.10

『子どものすきな神さま』

新美南吉作,西條由紀夫絵/サンライズ出版
2019年発行/E サイ

 子どものすきな神さまがありました。

 そんな冒頭からはじまるのは、新美南吉の童話を温かな絵で彩った画家・西條由紀夫の絵本です。
 神さまが遊ぶ森の様子や、そこかしこに見えるけものたち。雪の中を、自由にのびのびと遊ぶ村の子どもたちと、真っ白な雪のなかに寄り添う家々など、南吉の童話がもつ柔らかで自由な世界を描いたこの絵本は、ただあるがままにその風景を映し出しています。
 茶目っ気を出して子どもたちに交じり遊ぶ神さまと、神さまを相手に他愛のないいたずらをしようとする子どもたちの様子は、神さまが生活の中に当然のように存在し、息づいていることを物語っています。教訓めいたこともなくただただそれだけで終わる物語に、南吉は何を思い、込めたのでしょうか。
 作家が、この童話を絵に描いてみようと思ったのは、「物語のおもしろさ」だとあとがきで語っています。教訓や感動の涙を誘うような場面はないけれど、読んだあとに、普段思ってもみなかった疑問と想像力を駆り立ててくれるおもしろさがあり、この物語の前後はどうなんだろうと、さらにお話を楽しく広げてくれるといいいます。
 そんな作家のわくわくする気持ちが込められたこの一冊は、南吉の童話世界を知る一歩として手軽に読めますが、神さまが息づく時代を感じ、どこか郷愁を誘う風景を瞼に浮かべながら読むことができる味わい深い絵本です。描く風景が、どこか見知ったように感じるのは、作家が滋賀県在住だからかもしれません。湖南で、版画や、漆と和紙で作るアクセサリー、漆喰を使った絵などを作る創作活動をしている作家の見る風景が、私たちが普段大学の周りで見る風景と似通っているからではないでしょうか。

素朴で優しい南吉の童話世界と、その世界を温かく描いた作家の絵を、ぜひ楽しんでみてください。

(へろへろ隊員 やまだ)

2019.9

『正しいコピペのすすめ:模倣、創造、著作権』

宮武久佳著/2017年発行
岩波書店/021.2 ミ

 私たちは、「著作権」と聞くと何を思い浮かべるでしょう。「よく分からないから、まあいいか」と思っている人、あるいは「よく分からないけど、無視できなくてうっとうしいもの」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。この本はそんな私たちに、私たちの生活に即して、分かりやすく著作権について教えてくれます。
 そもそも著作権は、人が創造した物理的に形のない著作物(例えば音楽、絵画、小説、論文など)に財産的な価値を認めるようになって生まれた概念です。日本では「著作権法」という法律で、著作者の権利は守られています。ただ、この著作権法の目的は、第1条にもあるように「文化の発展に寄与する」ところにあります。人は何か創造的な仕事をなす時、何もないところから創りだすのではなく、過去の創造物から刺激を得て生みだしている、つまり現在の文化は過去の人類の知的な遺産の上に成り立っており、著作権法はその発展に寄与するためのものだというのです。この本の著者も「『創造とは過去の作品の組み合わせ』であることが多い」として、1つの章を「コピーと創造性」という内容に充てています。
 ネットワークの発達は、今までの人類の知的遺産や様々な知識・情報を誰でも簡単に手に入れられる状況を作り出しました。そして、これからの時代は「創造性」がますます重要視される時代です。だからこそ、この本のタイトルのように「正しいコピペ」の知識が必要なのです。この本は高校生にも分かるように編まれたシリーズの一冊ですので、ぜひ読んでみてください。
 最後に、著作権法では保護期間があり、一定の期間が過ぎると誰もが利用できるようになります。日本ではそれが今まで50年でしたが、2018年12月30日から70年になりました。これは日本が締結した、著作権にも関連するTPP(環太平洋パートナーシップ協定)がこの日に発効したからです。

(へろへろ隊員 ひらい)

2019.8

『日本のしきたりが楽しくなる本』

火田博文著/彩図社
2018年発行/382.1ヒ

 この本では、日本の長い歴史の中ではぐくまれてきた行事、儀式、作法の方法、由来などが紹介されています。
 第一章はお正月、お盆、お月見、年越しなど「四季折々のしきたりを楽しむ」。「○月のしきたり」と月ごとに紹介されています。
 第二章は神社への正式参拝、結婚式、厄年など「人生の節目でふれるしきたり」。意外と知らないルールが!?再確認しておきたいしきたりです。
 第三章は無礼講、縁日、お神輿、など「笑いのお祭り、福を呼ぶ儀式」。「ジャランポン」というお祭り…知っていますか?不思議なお祭りは日本中に残っています。
 第四章は敬語、挨拶、しつけ、正座など「暮らしの中の大切なしきたり」。改めてしきたりを学び、実践してみましょう!
 第五章はお茶、塩、箸、風呂、占いなど「しきたりと共にある身近なもの」。身近なものの歴史を知る!今後の意識が変わるかも?
 ひとつの事柄に対し、内容が2~4ページと短く分かりやすくまとめられています。

 「しきたり」という言葉を聞いて、みなさんはどんなイメージを思い浮かべますか?堅苦しい、難しい、よく分からないなどと感じたことがある人が多いのではないでしょうか。
 昔から日本人は、四季のある恵まれた自然の中で、祖先や自然を大切にしながら生活をし、それがしきたりや年中行事として今日まで受け継がれてきました。
 私たちは人と会ったときにお辞儀をすることからはじまり、食事の作法や四季折々の行事など、さまざまなしきたりに囲まれて生きており、しきたりとは切っても切れない関係です。
 しかし、そんなに難しく考える必要はありません。ひとつひとつの行動にはきちんと意味があり、そこには古くからの日本人の想いが込められているのです。
 グローバル化が進み、次々と新しいものが生み出され考え方も多種多様になっている現代で、なぜこんなに守らなくてはならない決まりが多いのか、もっと自由でもいいじゃないか、そう思う人もいるかもしれません。もしもそう思う人がいたら、ぜひこの本を読んでみてください。決まりごとが多いのには、きちんと理由があるのです。読み終われば、きっとしきたりに対するイメージが変わり、「知ってる?」と誰かに自慢したくなるかもしれません。
 冠婚葬祭、子どもが生まれればお宮参りや七五三、お中元やお歳暮等の贈りものなど、今後の人生においてもしきたりはとても大切なものです。
 日本のしきたりの根っこには相手を想いやる和の心があります。日本人も、外国の人もぜひ日本のしきたりを知って、そして体験して、「和」をもっと楽しんでみてください。

(へろへろ隊員 いわしま)

2019.7

『生きるための図書館 一人ひとりのために』

竹内悊著/岩波書店
2019年発行/010.4 タ

あなたにとって、図書館とはどんな場所でしょうか?
本を読む所?
本を貸し出してくれる所?
調べ物をする所?
それとも…違う世界へと繋いでくれる扉?

この本では、60年以上にわたって図書館と関わり続けてきた著者が、図書館の成り立ち、図書館で働く人々のこと、図書館をとりまく世界、災害時の図書館や、図書館サービスの実例などの紹介を通じて、図書館・図書館に関わる人々・読者について語っています。

第一章では、地域の図書館の日常風景とサービスを、開館時間から順に柔らかな視線で語ります。老若男女、国も民族も様々な人が利用する公共図書館では、地域や読者(本書では利用者のことを読者と呼びます。)に合わせて図書館の蔵書やサービスを作っていきます。著者が身近にあってほしいと思った多摩地区の市立図書館分館で過ごす時間の中で、読者の様子や司書の仕事をひとつひとつ丁寧に説明しています。
第二章では、子どもたちによい本を届ける活動を続けている3つの団体を紹介します。石井桃子さんをはじめ、全国各地で様々な団体が子どもたちのための読書活動を行ってきました。その努力が、現在の公共図書館のサービスにもつながっています。
第三章では、日本における図書館の成り立ちとその変遷をわかりやすく説明しています。戦後、日本の図書館は大きく変わっていきました。それは、なぜ、どのように変わっていったのでしょうか?
第四章では、災害で学んだこととして、東日本大震災の被災地域と図書館のことに触れています。被災地域の図書館は被災後、何ができるのでしょうか?そして何をすべきなのでしょうか?
第五章では、学校図書館についていくつかの事例を紹介しています。公共図書館とは違い、教育現場に位置する学校図書館はその運営方法が様々で、格差の開きが最も大きい図書館であると言えます。そんな現場の中で、どのように運営されているのか、市民の視点で作られた公共図書館の事例も合わせて紹介しています。
最後に、本と人を繋ぐ人々についてまとめています。
図書館とは、本とは、なぜ必要なのでしょうか。生きていくなかで、図書館を利用しない人もたくさんいます。本を読まない人もたくさんいます。
それでも、なにかの折りに、図書館や本という存在を思い出し、触れることがあれば、きっと読者を助けたり、楽しませてくれます。

そんな著者の温かな思いが詰まった一冊です。

(へろへろ隊員 やまだ)

2019.6

『Presents』

角田光代著,松尾たいこ絵/双葉社
2008年発行/913.6 カ

 あなたのいちばん心に残っているプレゼントは何ですか?
 そう質問されたとき、あなたはすぐに答えられますか?

 この本は、「女性が一生のうちにもらう贈りもの」をテーマにした12編の短編小説です。
 「女性が」とありますが、男性にもぜひオススメしたい一冊です。

 私たちは、様々なプレゼントをもらって生きています。
 それは決して目に見えるものだけではありません。かたちのないものもたくさん受け取っているのです。
 この本も、赤ちゃんが初めてもらう『名前』に始まり、最後はおばあちゃんの『涙』で終わります。
 例えば、最初の『名前』の話の内容は、「なまえのゆらい」というタイトルで作文を書く宿題が出た小学生の主人公が母親に質問すると、あなたが生まれたのは春だったから春子なのよ、と実にそっけなく答えられました。主人公はクラスメイトの 作文でそれぞれの名前の意味を知り、地味でありふれた自分の名前がますます嫌いになりました。しかし、自分が親になり、子どもの名前を考えるとき、母親の想いを知ることになったのです。
 クスッと笑えたり、感動の涙が流れたり…どこかなつかしいような、せつないような雰囲気がただよう中に最後は心がほんのりあたたかくなるような、そんな短編が集まっています。

 子どもから大人まで様々な登場人物が出てくるので、読む年齢や置かれている状況が変わると、この本の感想も変わると思います。自分の環境の変化に伴い何度でも読みたくなる本です。

 プレゼントは、贈る人ももらう人も、プレゼントそのものはもちろんだけれど、その人との関係、そのときの自分の感情などがまとまって一つとなって、思い出という記憶となります。
 かたちがあってもなくても、想いが込められたプレゼントはあたたかく、愛おしい。
 人の一生は家族や友人など周りの人たちからのプレゼントで豊かになっていると感じ、そして今までもらった数々のプレゼント、これから贈るプレゼントについて、改めて考えさせてくれます。

 大切なものを包むように、ブックカバーも包装紙のように華やかです。
 角田光代・松尾たいこの優しい文章と絵が、あなたに様々なものをプレゼントしてくれるはずです。

 この本は、あなたへの大切なプレゼントです。
 ぜひ一度読んでみてください。

(へろへろ隊員 いわしま)

2019.5

『メディアにむしばまれる子どもたち : 小児科医からのメッセージ』

田澤雄作著/教文館
2015年発行/376.11 タ

 現在、私たちのまわりは、テレビ、ビデオ、ゲーム、インターネット、タブレット、スマートフォンなど、さまざまなメディアがあふれています。そして、それらは私たちに便利さや楽しみを与えてくれています。このような社会環境の中で、幼い子どもたちもまた、長時間にわたって、テレビの前でアニメを見ていたり、タブレットでゲームをしているのをよく見かけるようになりました。
 大人はさておき、さまざまなメディアと長時間かかわる子どもの生活が、子どもの発達に悪影響を及ぼすことはないのだろうかという不安は、多くの人が感じていることではないでしょうか。しかし、何故?と問われると何となく口ごもってしまいます。この本は、そのことを、分かりやすく教えてくれます。
 過剰なメディア漬けがもたらす弊害として、著者は「親子の絆が希薄なまま時間が過ぎていく」「社会力の土台が形成されない」「心の発達に遅れが生じる」「コミュニケーションやパーソナリティの問題が形成される」の四つを挙げています。また、子どもの社会的問題の背景にあるものは、過剰な映像メディア接触による脳の疲労、慢性疲労であるとしています。このようなことが、多くの事例をもとに具体的に、また科学的に説明されています。
 著者は、50年近く子どもたちを診察してきた小児科のお医者さんです。そして、子どもたちの生活に各種のメディアが深く入り込んでくるにしたがって、原因不明の頭痛や腹痛を訴える子どもが増えてきたことから、その因果関係を追及し、それがいかに深刻な問題であるかをこの本で伝えています。
 これからの社会を担っていく子どもたちの問題は私たちすべての問題です。これからの社会のためにも、子どもたちの笑顔のためにも、ぜひ読んでみてください。

(へろへろ隊員 ひらい)

2019.4

『くよくよしない力』

フジコ・ヘミング著/秀和システム
2018年発行/762.1 ヘ

 辛いことや悲しいことが起こった時、あなたはどうやって乗り越えますか?
 美味しいものを食べたり、思いっきり歌ったり、泣きたいだけ泣いたり、人それぞれたくさんの乗り越える方法があると思います。
 著者のフジコ・ヘミングさんは、今でこそ世界的に有名なピアニストですが、成功までに多くの苦難に直面してきました。学生時代にいじめられ、コンサート直前に聴力を失い、孤独で辛い無名時代を過ごしました。
 まるでドラマのように次々に襲ってくる苦難に、彼女はどうやって立ち向かったのでしょうか?

 著者のゲオルギー・ヘミング・イングリット・フジコさんは、スウェーデン人の父と日本人の母のもとベルリンで生まれ、5歳からピアノを始めました。東京芸術大学を卒業した後、29歳でベルリン音楽学校に留学し、偉大な指揮者やピアニストに認められます。しかし、ウィーンでのコンサート一週間前に風邪をひき、左耳の聴力を失います。元々中耳炎で右耳の聴力を失っていたこともあり、音楽家を志す者としてとてもつらい現実が彼女を打ちのめします。
 そんなどん底の経験から立ち上がり、素晴らしいピアニストとして活動する彼女の言葉をまとめたのがこの本です。

「相手に何かしてもらうのではなく愛情を注ぐ存在がいれば自分の不幸なんてたいしたことないと思えてくる」

 小さな頃から猫と共に育ち、いつも数匹の猫がそばにいる猫中心の暮らし。愛情を注ぎ面倒を見る存在のある暮らしの大切さを彼女は説きます。猫だけではなく、一度壊れたけれど修理して使っている椅子や、大切にしているグラス、長年愛用しているトランクなど、身の回りの物にも愛情深く接し大切にする生活のなかで、小さな喜びを見いだして生きる力にしていきます。
 考え方、捉え方ひとつで世界はかわる。自分を枠にはめてしまわず、心を自由にすることで、どんな困難にも立ち向かうことができる。
 彼女のそんな考え方や生き方は、彼女自身が色々な経験を経て身につけてきた術です。くよくよせず明るく前向きに。
 辛いことがあった時、立ち上がれないと思った時、彼女の言葉を思い出してみるのもいいかもしれません。

(へろへろ隊員 やまだ)