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へろへろのおすすめ本

へろへろのおすすめ本
図書館に時々出没するかえるのへろへろ。
住処は大学横の田んぼだという噂(田村山とも!?)。
ふらりとやってきては豆知識をつぶやくのが趣味なのだとか。
図書館公式キャラクターであるへろへろ隊長のもと、隊員である司書が本をおすすめしていく。
おすすめ本はカウンターにあります。
《 2022年度 》

2022.11

『 I Love Youの訳し方』

望月竜馬著/雷鳥社
2016年発行/902.09 モ

 「I Love You」という言葉を、夏目漱石は「月がきれいですね」と訳し、二葉亭四迷は「死んでもいいわ」と訳した、という逸話があります。耳にしたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
 本書は、「情熱的に」「感傷的に」「個性的に」「狂気的に」「浪漫的に」という5つのカテゴリーで、国内外の100人の作家が作品や手紙に記した愛の言葉を、作家の紹介と共に掲載しています。気分によって読むジャンルを変えてみるのも楽しいかもしれません。

 『話したいことよりも何よりもただ逢うために逢いたい
         竹久夢二 『竹久夢二、恋の言葉』(河出書房新社)より』

 本書の一番最初に掲載されている言葉です。
 その人と何かを話したいとか、どこかへ行きたいとか、「〇〇のため」という目的がなくても、ただ逢いたい、という想いがストレートに伝わってくる言葉です。短い言葉ですが、愛情の深さがうかがえます。
 「愛してる」と言う習慣がない日本ですが、直接「愛してる」と言わなくても、表現の種類は人の数だけ存在します。日々言葉と向き合い続ける作家たちは、「愛してる」という意味を実に多種多様に表現しています。また、それを受け取る側も、解釈の仕方はそれぞれ異なるでしょう。ひとつひとつの言葉に著者のコメントが添えられているので、共感したり、違う解釈をしながら読むのもおもしろいと思います。本書から気に入った言葉が見つかったり、またそこから作品を知り、作家を知る、というすてきな出会いがあるかもしれません。ぜひ、読んでみてください。
 私は本書を読んで、自分で言葉を考えて表現する、という大切さと素晴らしさを感じました。さて、あなたなら「I Love You」をどのように表現しますか?

(へろへろ隊員 いわしま)

2022.10

『芭蕉の風景 上下巻』

小澤實著/ウェッジ
2021年発行/911.32 オ 1-2

 「芭蕉」という名にひかれ、本学図書館に新刊として購入された本書をさっそく読んでみた。
 「NHK俳句」でもおなじみの俳人である筆者が、芭蕉が句を詠んだ地を実際に訪れて記した、まさに紀行文である。内容としては、芭蕉が伊賀上野から江戸へ出るまでから始まり、俳句の製作順に並べられている。取り上げた一句について、その句の説明、句が詠まれた場所あるいはイメージされた場所を実際に訪れ、その地の現在の様子を、そして、芭蕉が訪れた当時の状況も詳しく解説している。それを読む私はあたかもその場にいるような感覚となる。また、最後には芭蕉が立った地で筆者が俳句を詠んで添えている。これらがあわせて3ページで説明されており、一つずつ完結しているため、どこから読んでも問題はない。
 そこで、まずは自分が知っている句を探して読み始めた。
 例えば、

  閑さや岩にしみ入蝉の声

 これは芭蕉が山形県にある山寺(立石寺)を訪れた時の句である。私の好きな句の一つである。私も5年ほど前、実際にこの山寺を訪れたことがある。夏のことであり、汗をかきながら急な坂にある石の階段を一段、また一段と上った。百丈岩と呼ばれる岩山の上に建てられた五大堂からの眺望はその暑さを忘れるほどすばらしいものだった。その時にはやはり筆者と同様、芭蕉の心境に思いをはせた。

  其のまゝよ月もたのまじ伊吹山

 こんな句があったことは本書で初めて知った。これは「おくのほそ道」には未掲載の句だと書かれている。句意は「伊吹山はそのままでいい、月の風情を頼ることもあるまい」と書かれている。伊吹山の威容を詠んだものである。大学生となるまで大垣で過ごし、毎日のように伊吹山を見て、季節の推移を感じていた私には実感を伴ってそのすばらしさに共感できる。
 また、

  蛤のふたみにわかれ行秋ぞ

 これも大垣で作られた有名な句であり、この句についても現地を訪れての筆者の思いが書き記されている。ここは「おくのほそ道」の結びの地であると同時に、芭蕉にとっては次の旅の出発点でもあったと感じられる句である。
 こうしていくつか知っている句もあるが、一方で私が見たこともない句が山ほどある。当り前のことではあるが、それは発見の連続だった。著者の記述をもとにその地を訪れてみたいとも思った。
 文学史を振り返ってみると、芭蕉は俳諧を、当時の一流の詩歌だと考えられていた和歌や連歌、漢詩と肩を並べるまでに育て上げた存在といえる。こうして芭蕉の句をたどる旅を二十年近く続けてきた、と著者は書いている。まさにライフワークといえる作品である。よい本に出会ったと感じている。

(へろへろ隊員 おりと)

2022.9

『俗語百科事典』

米川明彦著/朝倉書店
2021年発行/814.9 ヨ

 本書は、40年にもわたって俗語研究を続け、体系化してきた著者が、その成果としてテレビ・ラジオ、新聞・雑誌の取材を受けたときの質問や問い合わせを盛り込んでまとめた俗語についての百科事典です。 

 著者が研究を始めた頃は、「俗語」の評価は低く、下劣で卑しい言葉というニュアンスがあり、研究者の間ではあまり重要視されていなかったそうです。時代によって意味合いが変わってきた「俗語」は、日常のはなし言葉を意味していた中世からどんどん変化し、現在では改まった場では使いにくい言葉ととらえられています。しかし、言語研究者として、それはまちがっているのではないか、「俗語」を言葉として正しく位置づけなければいけないのではないか、という思いに突き動かされ、研究を重ねました。また、当時誰も見向きもしなかった『新しい言葉の字引』(1918年刊)や『大増補改版 新しい言葉の字引』(1925年刊)、『モダン用語辞典』(1930年刊)などの大正から昭和初期にかけての新語・流行語辞典類に出会ったことも著者の背中をおしたようです。

 著者は、寿命の短い新語・流行語・隠語などの俗語をカード化し、検索できるようにまとめました。そこから、「若者ことば」なども研究し、その研究内容を本として多く発行してきました。このように体系化を目指した俗語研究の集大成としての本書は、学術的な見解から語源・造語者といった情報、ちょっと自慢できることばの知識まで様々な角度から切り込んだネタ本の様相で、調べても楽しいが、読んでも楽しい一冊となっています。
 私たちが日常によく使う言葉も多く掲載されていて、俗語から一般語へ変化した言葉もあり、その代表的な例に「ヤバイ」があります。他に相撲用語から転じた「黒星」「白星」など、耳慣れた言葉もたくさん。
 意味や変遷を知るとますます楽しくなる言葉の世界。ぜひ、言葉の知識に触れてみてください。

(へろへろ隊員 やまだ)

2022.8

『世界のサンドイッチ図鑑』

佐藤政人著/誠文堂新光社
2017年発行/596.63 サ

 世界でもっとも人気のある食べ物のひとつであるサンドイッチ。
 日本では英国発祥のサンドイッチが一般的ですが、世界には個性豊かで思いもよらない組み合わせの様々なサンドイッチがあります。
 そんな世界のサンドイッチの中から厳選された355種類の写真とレシピを、国別に紹介しているのが本書です。

 カラフルな写真で掲載されているサンドイッチはどれもおいしそうです。2枚のパンに具を挟んだものから、具をのせているだけのもの、スライスパンではなくバンズに具をはさんだバーガー、切れ目をいれたパンに具をはさんだドッグなど、多種多様です。無類のサンドイッチ好きである著者の、「パン、あるいはパンに相当するもの(パン生地、パイ、パイ生地、ラテンアメリカのプランテイン(調理用バナナ)など何でもかまわない)で具をはさんでいるもの」「オープン・サンドイッチ、パンの上に何かがのっている、あるいは何かがかかっているもの」という定義に沿った選りすぐりのレシピは、甘いものから辛いものまで、バラエティに富んでいます。
 具材もビーフハンバーグやハムといった定番から、カンガルーの肉、ミートパイといった変わり種、アイスクリームやフルーツなどのスイーツ系などがあり、それぞれのお国柄がでています。
 また、巻末には、パン・ソース・シーズニングのレシピや、サンドイッチに使われる珍味が掲載されていて、手に入れることができたら試してみたい気持ちになります。

 サンドイッチらしきものが歴史上に登場したのは1世紀で、ユダヤ教の指導者が、2枚のマッツァー(発酵していない平たいパン)にラムとハーブをはさんで食べたそう。
 現代では、私たちのまわりには当たり前のようにサンドイッチがあふれ、楽しむことができます。
 さて、あなたはどのサンドイッチを食べたいと思いますか?

(へろへろ隊員 やまだ)

2022.7

『feel blue こころが元気になる贈り物』

吉野雄輔写真, 秋月菜央文/経済界
2003年発行/159ヨ

 「文は武よりも強し」という言葉があります。「書かれた言葉は物理的な力より強力である。説得力のある言葉の方が強大な軍事力よりも人々に与える影響力は大きい。(『現代英語ことわざ辞典第2版』 戸田豊編著 リーベル出版、2004年発行、p723)」という意味です。言葉は人を愉快にしたり、怒りや悲しみを和らげたり、時には突き動かしたりします。本を読んで、そこに書かれた言葉の力を借りてみませんか?
 本書は、優しくあたたかな言葉がけをしてくれます。少し心が疲れてしまったときや、背中を押してほしいときに特におすすめです。全31編の中から1つご紹介します。

今日という
この日は 1日だけ
もう 2度と取り戻せない
それなら
笑って過ごそう

怒って過ごしても
泣いて過ごしても
うつむいて過ごしても
同じ1日

暗く過ごしたら もったいない
楽しいことを思い出して
好きなことをして
笑って眠りにつこう           「同じ1日なら」より

 確かに、今日という日は1日だけであって、そして同じ1日なら暗い気持ちでいるよりも明るい気持ちで過ごしたいですね。改めて1日1日を大切に過ごそうと思いました。読み進めると、共感したり、ハッと気付かされることがあり、前向きな気持ちになることができました。
 海と海の生物全てをこよなく愛する写真家による、美しい海の景色や魚たちの写真が多く掲載されていて、爽やかで癒やされる、夏にぴったりの1冊です。パラパラとページをめくって見ているだけでも気軽に楽しむことができる本書をぜひ手に取ってみて下さい。

(へろへろ隊員 いわしま)

2022.6

『中高生のための哲学入門:「大人」になる君へ』

小川仁志著/ミネルヴァ書房
2022年発行/104 オ

 題名を見て、大学生の自分たちは読者の対象ではない、と思わないでください。皆さんも承知しているとおり、民法改正により成年年齢が変わり、2022年4月から「18歳」は「大人」の扱いとなりました。では、私たちはどうあれば大人なのでしょう。いわゆる「大人」はみんなそれを知っているのでしょうか。筆者はその「鍵をにぎるのは「哲学」でした」と述べています。
 哲学というとどのようなことを学ぶ学問なのかわかりにくいと思っている人も多いと思います。筆者は、哲学の特徴とは「当たり前のわかりきったことを問う」という点とそれを「いつまでも問い続けていく」という点、だとしています。また、哲学とはどのようにすればよいのか、ということについては、「物事を疑い、様々な視点で捉え直して、再構成し、それを言語化する」と述べています。つまり、哲学の第一歩は「当たり前を疑う」ということになります。例えば、自由とはどのようなことだと皆さんは考えていますか。「自由とは何でも好きなようにできることだと思っていたなら、一度それを疑ってみてください」と筆者は述べています。このように具体例をあげてわかりやすく説明しているので、皆さんには抵抗なく読めるものと思っていますし、理解も進むものと思います。
 皆さんは児童から生徒、そして現在、学生となり、次は社会人となる人が多いと思います。これまでであれば、社会人=大人というように理解されていました。その「大人」はこれまで二十歳でした。それが今年から十八歳となったのです。しかし、社会人になったから何でも分かるというものではありません。大切なことは考えるということです。「考える」ということについては大学において様々な科目を通して様々な方法で学んでいます。
 現代社会において、知識だけで判断できる物事は少ないと思います。そのため、みなさん自身が主体的に考え、意見の持ち方を身につける必要があります。この本においてはそれを具体的な事例をもとに述べています。これまで一度もこんなことを考えてこなかった、というのであれば今がチャンスです。哲学は「考えるための道具」であり、この道具の目的は「よりよく生きていくこと」と著者は述べています。「哲学」についてわかりやすく紹介した書です。ぜひ、読んでみてください。


(へろへろ隊員 おりと)

2022.5

『食育の理論と教授法 : 善き食べ手の探求』

上田遥著/昭和堂
2021年発行/498.5 ウ

 飽食の時代と言われる現代において、何をどのように食べるのか、ということは、イコール健やかに人生を重ねる方法のひとつと捉えることができます。ただ単に必要な栄養素を満たせばよいという生理的な満足だけではなく、温かい食事で心を満たす心理的な満足や、他者や風土とつながりを保てるような社会・文化的な満足など、広範囲での生を健やかに保つための食育が大切です。
 すでに、家庭や保育・教育現場において食育は広く実践されていますが、その歴史を紐解き、課題や問題点を洗い出し、新たな教授方法を模索しているのが本書です。

 一般的に「食育」は2005年の「食育基本法」をもって誕生したとされていますが、「食教育」という発想はそれほど新しいものではなく、近代初期から、栄養教育、食農教育、食に関する指導など様々な食教育が展開されてきました。そんな食育の系譜や研究動向をわかりやすく解説し、新たな教授法としての味覚教育について、その効果や推進体制を詳しくまとめています。また、フランスにおいて、「善く食べること」「善く生きること」を意味するガストロノミの思想や、食育理論の構築にも触れています。
 一見難しい内容のように思われますが、その実は、「食べる」をどう考え、「教育」をどう考え、「善き食べ手」をいかに育むかを追求し、人が豊かに食べ、生きていけるようその方法を論じた一冊です。
 食育を実践していかなくてはならない保育・教育に係わる人だけでなく、自分の人生そのものを見直すきっかけとして本書に触れてみてはどうでしょうか?

(へろへろ隊員 やまだ)

2022.4

『デニムさん : 気仙沼・オイカワデニムが作る復興のジーンズ』

今関信子文/佼成出版社
2018年発行/589.213イ

 子どもから大人まで、ファッションとしても人気のデニム。洋服、帽子、バッグ、小物など、様々な商品があります。普段から愛用しているという人も多いのではないでしょうか。
 今回紹介する本書は、地元の人から「デニムさん」と呼ばれて親しまれている、オイカワデニムという縫製工場が舞台です。ミシンで縫うことが難しいとされますが丈夫な麻糸を業界で初めてジーンズに使用するなど、その高い技術力で今や世界的に知られる存在です。
 しかし、そこにいたるまでには、様々な困難がありました。工場がある場所は、宮城県気仙沼市。社長の死、不景気、そして東日本大震災による津波の被害…。そんな厳しい状況の中、オイカワデニムの2代目社長となった及川秀子さんが中心となり、困難を乗り越えてきました。不景気で仕事が減ってしまった際には、従業員たちに各々好きなジーンズをデザインから縫製まで自由に作ってもらうことで、工場で働く楽しさを思い返してもらいました。そして、そのときに生まれた美しい縫い目は、後に自社ブランドを立ち上げた際の特色となりました。
 震災の際には、工場を避難所として開放。避難した人々が不安な気持ちでいる中、秀子さんは工場から復興の旗を上げようと決意し「みなさん、働きましょう」と言い、士気を高めました。地元漁師との交流を深め、初めは失敗しながらも工夫を重ね、本来ならば捨てていた大漁旗やメカジキの部位を使用した商品を開発するなど、新たな挑戦に臨みました。
 震災の後に見つかったオイカワデニムのジーンズは、1本の糸のほつれもなかったことから「復興のジーンズ」、「奇跡のジーンズ」と呼ばれ、従業員の自信と多くの被災者を勇気づけるものになりました。
 本書を読み、オイカワデニムの歴史と魅力、ものづくりのおもしろさや苦労を知り、また、働くということについて改めて考える機会にもなりました。
 困難な出来事に遭遇したとき、それに柔軟に対応し乗り越える強さを学ぶことができる1冊です。

(へろへろ隊員 いわしま)