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へろへろのおすすめ本

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図書館に時々出没するかえるのへろへろ。
住処は大学横の田んぼだという噂(田村山とも!?)。
ふらりとやってきては豆知識をつぶやくのが趣味なのだとか。
図書館公式キャラクターであるへろへろ隊長のもと、隊員である司書が本をおすすめしていく。
おすすめ本はカウンターにあります。
《 2021年度 》

2021.4

『北欧の挿絵とおとぎ話の世界』

海野弘解説/パイインターナショナル
2015年/726.5 ウ

 スウェーデン、デンマーク、ノルウェーを中心に、フィンランド、アイスランドなどのヨーロッパ北部地域を指す北欧は、夏の白夜、冬の極夜といった独特の自然現象の中で、様々な神話や伝説、おとぎ話を育んできました。時には北ドイツも含むこともあり、「北欧神話」や「ゲルマン神話」には共通の物語がたくさんあります。
 柔らかな土壌のヨーロッパ中央部とは違い、ごつごつとした岩肌や厳しい自然が印象的な北欧の物語は、風景ひとつとっても神話的で、荒々しく力強さに溢れています。
 そんな北欧に伝わる神話やおとぎ話の世界と、それらを彩る美しい挿絵をひとつひとつ紐解き、解説しているのが本書です。

 第一章では、北欧の神話とおとぎ話について、第二章では物語を彩る挿絵画家について、豊富な資料を元に丁寧に解説しています。
 永遠の時を生きるギリシア・ローマ神話の神々とは異なり、死の運命と終末の時を迎える北欧の神々は、変化し、戦い、傷つき、死んで行きます。混沌から現れて世界を作った巨人たちを滅した主神オーディン。オーディンはユミルという名の巨人の身体から天と地を作り、アスクとエンブラ(アダムとイヴ)という最初の人間を生み出し、ミズガルズに住まわせます。古い神々であろう霜の巨人はヨーツンヘイムに追いやられ、オーディンたち新しい神々はアースガルズで世界を治めます。
 ヴァルハラという名の大広間に戦死した勇猛果敢な戦士を集める戦の乙女・ヴァルキューレや、誰よりも強い戦いの神・トール、トールの持つ伝説の鉄槌ミョルニルなど、最近ではゲームや映画でよく見かける名前が多くでてきます。
 やがてオーディンを始めとする神々の世界は、神々の黄昏<ラグナレク>として滅び、英雄の物語が始まります。また、神話と歴史のはざまで語られる英雄伝説の系譜とは別に、トロルや小人、妖精などが語られる民話も同時多く存在し、ファンタジー物語としてどのように語り継がれてきたのかを解説しています。
 誰もが知っているアンデルセンや、その世界を暖かな色合いで描いたアーサー・ラッカムなど、有名無名問わず紹介されていて、さらに物語世界に触れたくなります。もちろん、北欧を語る上で絶対外せないトーベ・ヤンソンの『ムーミン』についても触れています。

 そのほか、北欧のデザインや世界観など、様々な事柄について幅広く掲載されていて、北欧をまるっと楽しめる一冊です。
 パイインターナショナルらしい、美しく読み応えのあるこの本をぜひお楽しみください。

(へろへろ隊員 やまだ)