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「図書館だより第96号」と教員の本棚

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こんにちは!
図書館の山田です。
「図書館だより第96号」を発行しましたのでお知らせします。


 

教員の本棚は、子ども学科講師 中村愛先生です。

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『金子みすゞ童謡集 わたしと小鳥とすずと』
金子みすゞ著/JULA出版局/1984年発行/911.58 カ

 『金子みすゞ童謡集 わたしと小鳥とすずと』(昭和59年)には、60篇の童謡がどれもが柔らかく優しい語り口で綴られています。ぜひ一人リラックスできる場所で声に出して読んでみてください。心地よい言葉のリズムが感じられます。そして最後の一行を読み終えたとき、金子みすゞ独特の物事をみる視点にハッと気づくことでしょう。「いつもそばにあるけど気づかない、とっても大切なこと」を、穏やかにさらりと言いのけてしまいます。その視点の斬新さが魅力です。清々しささえ感じるほどです。また、日本語の抑揚やリズムが端正に美しくまとまっています。「つち」は、「こッつん こッつん」と小気味よいリズムではじまります。「星とたんぽぽ」は、「見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。」と反復するフレーズで語りかけます。
 明治36年生まれの金子みすゞは、大正末期『赤い鳥』など童話童謡雑誌でひときわ光を放っていた詩人でした。ところが26歳で亡くなり作品も忘れ去られます。没後52年の昭和57年に自筆の童謡集が見つかり全集が編纂されました。平成8年から国語の教科書にも掲載され、今では512篇の童謡が世界十カ国で訳されています。明治に生まれ、大正を生き抜き、昭和に再び価値を見出され、平成には多くの人を魅了する存在となりました。彼女の童謡は、時代や地域を超えても色あせないメッセージと、言葉の美しさを備えた作品なのでしょう。
 昭和から平成にかけて、歌曲や合唱曲の詩に使用されるようになりました。《めだかのがっこう》の作曲家中田喜直は、『童謡歌曲集 ほしとたんぽぽ』を作曲しています。この歌曲集は「童謡」と「芸術歌曲」の両方の性格・要素を兼ね備えています。また信長貴富、寺島陸也、石若雅弥など今活躍中の作曲家により合唱曲が発表されています。言葉が旋律となり、声とピアノが重なることで、新たな作品に生まれ変わります。そこに作曲家の解釈が響きとなって立体的に表現されます。金子みすゞの童謡は、完成した作品でありながら、読み手の想像力を掻き立てるゆとりを感じます。音楽と一体となった童謡は、新たな価値となり次の時代に受け継がれるでしょう。
 5月には新しい年号となります。どんな時もどんな場所でも、みすゞさんのような優しさを忘れずに、物事を見る目を磨きながら過ごしたいものです。みなさんもお気に入りの一篇を見つけてみてはいかがでしょうか。

(子ども学科講師 中村愛/図書館だより第96号より)
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図書館だよりは図書館2階文庫棚上にあります。 また、教員のおすすめ本はカウンターに展示しています。貸出もできますので、ぜひご覧ください。