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へろへろのおすすめ本

へろへろのおすすめ本
図書館に時々出没するかえるのへろへろ。
住処は大学横の田んぼだという噂(田村山とも!?)。
ふらりとやってきては豆知識をつぶやくのが趣味なのだとか。
へろへろ隊長のもと、隊員である司書が本をおすすめしていく。
《 2015年度 》

2015.4

『桜ほうさら』

宮部みゆき著/PHP研究所
2013年発行/913.6 ミ


 天保五年、上総国搗根藩で小納戸役を仰せつかる古橋家が廃絶となった。当主である宗左右衛門に賄賂の嫌疑がかけられ、家族を守るために疑惑を認め、自刃したからだ。長男・勝之介は母方の実家に蟄居となり、次男・笙之介は儒学者である佐伯老師の取りなしで書生となる。下男としての用向きをこなしながら、いつか父の汚名が晴らされるのではないかと日々を過ごす笙之介の元へ、ある日、心通わぬ母が訪ねてきて…。
 江戸深川の富勘長屋で市井に混じり、写本作りを請け負いつつ父の切腹の原因となった偽文書を作った人物を探す笙之介。そんな笙之介の周りで起こるミステリアスな事件と、桜がご縁でめぐり逢った人々。傷ついても悲しくても、事件を追い、出会った人々の事を考え、父を想って歩いていく笙之介がとにかく愛しくなります。家族であること、血が繋がっているからこその葛藤は、江戸の時代でも現代でも全く変わらなくて、人がいれば人と繋がった分だけ傷つき、癒されていくことが素敵だと感じられます。
 章立てられた物語はゆったりと進み、江戸の人々の生き生きとした描写と、章ごとに起こる事件が読み手をぐいぐいと引っ張ってくれます。笙之介が出会う人々も個性豊かで、宮部作品には珍しい、だんだんと距離が近くなる「桜の精」とのやりとりがとても微笑ましく、くすぐったい。
 タイトルの「桜ほうさら」は、山梨地方の方言「ささらほうさら」からきたもので、「あれこれいろんなことがあって大変だ、大騒ぎだ」という意味だそう。人生の切なさやほろ苦さと共に、人の温かさも感じられる笙之介の成長物語、笙之介の「ささらほうさら」な物語をぜひ楽しんでみてください。
(へろへろ隊員 やまだ)

2015.5

『良寛の石碑拓本集 滋賀文教短期大学図書館所蔵』

滋賀文教短期大学図書館編
滋賀文教短期大学同窓会/2015年発行/728.215 リ-シ


 「良寛さん」というとどのようなイメージをお持ちでしょうか。一般的によく知られているのは、子どもたちを愛し、子どもたちに囲まれて手毬で遊んでいる穏やかなイメージのお坊さん。

子どもらと 手毬つきつつ 霞たつ 永き春日を 暮らしつるかも

 実際に、このような歌も作られていますし、故郷新潟の夕日の丘公園には、子どもたちと語らう良寛像が設置されています。しかし、そのような良寛さんは、生涯無一物の清貧の中で、禅僧として厳しい求道の生涯を送った人だったようです。そして、その書は、今に至るまで多くの人々を魅了し続けています。
 その良寛さんの書を石に刻んだ碑が、良寛さんの生まれ故郷であり、生涯の多くを過ごした新潟にはたくさん設置されています。それらの碑に刻まれた文字を墨で写し取った拓本40数本が、平成24年、良寛研究家・川口霽亭氏より本学図書館に寄贈されました。この本は、その拓本の写真を集めた図録です。書かれている文字と読みを活字にして添えてありますので、何が書かれているのか分かるようになっています。また、その石碑がどのように設置されているかの写真も添えています。是非、手に取って良寛さんの書をながめてください。書に関してまったく知識がなくても、その美しさだけでなく、見ているだけで気持ちが鎮まったり、心がのびのびとする感覚が味わえたり、また、気持ちが引き締まったりと、いろいろな思いを味わえるように思われます。
 この本の後半には、本学国文学科書道課程の猪飼和喜夫先生による、それぞれの拓本の解説と良寛さんの生涯を描いた文章も収録されていて、併せて読むとより深い思いを味わえます。
 石碑には、和歌、俳句、漢詩など様々なものが刻まれています。本学図書館では拓本をいただいたのをきっかけに、良寛関係の図書を増やしました。和歌などの作品そのものに、また良寛さん自身に興味を持たれた方もこの機会にどうぞ。
(へろへろ隊員 ひらい)

2015.6

『アルジャーノンに花束を』

ダニエル・キイス著・小尾芙佐訳
早川書房/1989年発行/933.7 キ


 32歳になっても幼児の知能のままの主人公チャーリイ・ゴードン。昼間はパン屋で働きながら、賢くなるためにビークマン大学成人センターに通っていました。
 そんなある日、大学の博士らによる脳外科手術で頭がよくなるという話が舞い込みます。
 手術を受けたチャーリイは日に日に知能を上げていきます。(物語は一人称による経過報告式の文章で、手術を受ける前から手術を受けた後の主人公の意識の変化がよくわかります。)そして同じ手術を事前に受けたアルジャーノンという名前の天才白ネズミにチャーリイは奇妙な親近感を抱きはじめます。

 チャーリイは手術を受け知能が上がったことにより、過去の出来事を思い出します。自分自身のことや、幼い頃の家族との記憶。思い出さない方が幸せだったかもしれない悲しい事実。今や超知能をもつ天才となったチャーリイには様々な問題が待ち受けていたのです。

 1959年に中編「アルジャーノンに花束を」が発表され、今回のおすすめ本はそれの長編版になります。1968年に映画化され、日本では「まごころを君に」というタイトルで公開されました。2002年には小説版をもとにしたテレビドラマ放送が放送されました。そして、2015年4月からまた新たな設定でテレビドラマ化されていて、今現在、観ている人もいるのではないでしょうか。

 友情、愛情、悲しみ、憎しみ、そしてチャーリイの優しさ。すべて読み終えた後の最後の数ページにはグッときます。本書はSF小説ですが、フィクションとは思えないほど人間味に溢れていて、のめり込んでしまう作品です。

 ダニエル・キイスの世界的ベストセラー「アルジャーノンに花束を」。
 ドラマが放送されているこの機会にぜひ、原作を読んでみてはいかがでしょうか。
(へろへろ隊員 かわむら)

2015.7

『本日のお言葉』

川原泉著/白泉社/1989年発行/726.101 カ 1

 生きていくことは大変です。
 生きていくことは難しいです。
 毎日毎日いろんなことがあったりなかったり。
 何かが起これば心が乱れて、何も起こらなければ平凡な日々に飽きてしまいます。
 世の中の大勢の人たちは一体どうやって毎日を乗り越えているのでしょうか?

 そんなことをつい考えてしまうのは、本格的な夏を前にしてちょっぴり疲れているから。
 脳みそを取り出してぐりぐりとマッサージしたら、きっとすっきりすると思うけれど、それはさすがに無理なので、読書による心と頭のマッサージをしてみようと思います。
 読書マッサージに必要なのは凝りをもみほぐしてくれるような本。今回お薦めする『本日のお言葉』は、まさにそんな読書マッサージのための一冊です。
 本書は、漫画家・川原泉氏の作品から精選された365日お言葉集です。哲学的かつ脱力系の作風で、みるものを深淵な哲学思想ループに引き込みつつも、やわらかな絵柄と随所にちりばめられたゆるい笑い、そしてどこか抜けているキャラクターたちが魅力の漫画家です。
 そんな著者の作品から抜粋されたお言葉と、世界の名言や諺、本日の記念日や歴史上の出来事を、川原作品の名場面とともに楽しむことができます。

 例えば、勤労青少年の日である7月18日。
 「…時々俺は考える
  ズボンをはいた女は正常で
  なにゆえスカート男は
  変態なんだろう?」(『月夜のドレス』)

 うーん!深い!その謎はとっても深くて難しい!
 でも、(私は)どうでもいい。
 どこまでが真面目でどこまでがギャグなのか。その絶妙なさじ加減がぐいぐいと心をほぐしてくれます。
 ちなみに、同日に掲載されている諺は以下の通り。
 「女がズボンをはき、男がエプロンをかけると、うまくいかない」(イタリアのことわざ)
 それぞれの役割ということなのでしょうか?
 考えはじめると宇宙の真理にまで迫ってしまいそうなテーマをぶつけてくるのに、はっと我に返ると、「いや、別にそれ今考えなくてもいいじゃない?」と肩の力が抜けていきます。

 日を選んで読むもよし。1月1日から順を追って読むもよし。ちょっぴり疲れた日には川原節で心と頭をマッサージしてみてください。きっと日々を生きていくのが、今よりも楽になると思います。
(へろへろ隊員 やまだ)

2015.8

『子どもによる 子どものための 「子どもの権利条約」』

小口尚子,福岡鮎美文
アムネスティー・インタナショナル日本支部,谷川俊太郎協力
小学館/1995年発行/316.1 コ


 「子どもの権利条約」をご存知ですか。子どもたちがその身体と心を健やかに成長させることを子どもの権利として定めた条約です。そこでは、子どもたちを、大人と同じ人類社会の構成員として、固有の尊厳および平等のかつ奪い得ない権利を有するものと定めています。1989年に国連で採択され、現在195の国と地域が締結しています。もちろん日本も1994年に批准していますので、国はこの子どもたちの権利に責任を負っているのです。
 この本は、日本が批准した年にアムネスティ・インターナショナル日本支部が主催した「子どもの権利条約・翻訳・創作コンクール」で、最優秀賞を受賞したもので、翻訳したのは、なんと、中学2年生の女の子二人だったのです。当時、テレビや新聞でもたくさん取り上げられました。子どもたちにとって読みにくく意味が読み取りにくい政府訳(政府訳では「児童の権利に関する条約」となっています)と違って、その精神が分かりやすく、リズミカルに、また力強く語られています。読んでいると子どもたちが、生き生きとたくましく成長していくのが感じられ、全ての子どもたちが、このようであってほしいと思ってしまいます。
 とはいえ、子どもたちは弱い存在でもあります。だからこそ、子どもたちは、その身体と心を成長させるための保護をも国・大人(私たち)に要請しているのです。子どもたちの悲惨な出来事を耳にするたびに、この「子どもの権利条約」が守られていくことを願わずにはいられません。
 この本には、国連で採択された正文(英語)とその政府訳も載せられています。また、多くの写真もあって、見ていてもとてもきれいな本です。読み通さなくても、開けたとこらから、どの条文からでもぜひ読んでみてください。
(へろへろ隊員 ひらい)

2015.9

『数に強くなる』

畑村洋太郎著/岩波書店
2007年発行/410 ハ


 みなさん、数は好きですか?「数字なんて見るのもイヤ」、「私、数アレルギーなんです」などという声が聞こえてきそうです。この様になにかと嫌われがちな数。ですが、この本は数が得意な人はもちろん、日ごろ数に苦手意識を持っている人にこそ読んでほしい本です。

 数は生活をしていく上で何かとついて回るものです。学問としての数学や仕事での数字以外にも、身の回りを見渡すと数だらけであることに気付くでしょう。
 本書では、数に対する接し方や「数に強くなる」ための方法と秘訣を具体的な例をたくさん出しながら紹介しています。本書の最終章「数を使う」では、毎日の生活の中から数を引き出して、筆者が見つけた法則を紹介しています。例えば、「1駅2分の法則」や「自己評価は2割増しの法則」などなど。思わず「何それ」と突っ込みたくなるような面白そうな法則が満載です。
 また、イラストやところどころに蛇足を交えているので、読みやすく、わかりやすく、面白い。読み進めるうちにワクワクしてきて、数の世界にどんどん引き込まれていきます。

 よく、「あの人は数字のセンスがある」と言って、数に強い人を特別視する見方が世の中にはありますが、そういう人は本当に特別な人なのでしょうか?そうではなくて、誰にでも「数の感覚」はあると筆者は言います。世の中の人の多くは、自分に「数の感覚」があることをに付いていないだけで、気がつくキッカケさえあれば「数の感覚」は突然のように花開くと。そして、日々の訓練と楽しみ方次第では、だれでも数に強くなれるとも。

 本書読み終えたころには、数が苦手なあなたも数が得意になるかもしれませんよ?
(へろへろ隊員 かわむら)

2015.10

『SAPEURS -THE GENTLEMEN OF BACONGO-』

ダニエーレ・タマーニ著, 宮城太訳
青幻舎/2015年発行/383.14 タ


 あなたは、「SAPEURS(サプール)」という人々を知っていますか?

 「エレガンス」が非常に重要視されたコンゴ共和国において、その文化が生み出した伝統である「おしゃれで優雅な紳士協会」通称「SAPE(サップ)」。それはフランス統治時代に始まり、継承されてきました。フランス流のエレガンスに憧れたコンゴの人々が、ブランドを信仰し、外見に気を配ることを大切にし作り上げたその伝統は、一見、外見の派手さを追究しているだけのように思えます。しかし、何よりも重視したのは、どう着こなすかを知ることだけでなく、紳士のルールを身につけることでした。サップとは芸術であり、本物の紳士として、道徳観念に基づいた個としての礼儀や友愛の精神を知ることが大切で、そのために、文化・経験・洗練された立ち振る舞いを体得するよう努力し続けていきました。そうやってサップを体現していった人々を「SAPEURS(サプール)」と呼ぶのです。

 社会的地位もさまざまなサプールたちは、週末ごとに会員制のバーやナイトクラブに集まり、社会的意識の高い彼らに憧れる若者たちの注目を集め、時には伝授していきます。その彼らが集まる有名なバーなどは、すべて市街地からそれほど遠くないバコンゴ地区に位置しています。
 そのバコンゴ地区で、数多くのサプールたちに密着し、その精神を理解し、写真をとり続けたイタリア人写真家ダニエーレ・タマーニによって、この素晴らしく美しい写真集が出版されました。
 彼らの衣服は高額で、派手です。一着のスーツを買うために、ひたすら働き、その収入のほとんどを洋服に費します。そうやって得た衣服は、慎ましい住環境の中でまるで煌びやかな花のように人々の羨望を集め、大切にされます。
 この消費社会と言われる現代において、彼らほどファッションや衣服を大切に、しかも格好良く着こなしている人はいないでしょう。外見だけなく、独自の矜持を掲げる彼らのその生き方はとても豊かに見えます。また、サプールたちは非暴力を掲げていて、サップがとても平和主義的な運動であり、コンゴという国において平和的方法で和平調和に貢献してきたこともわかります。

 写真集では、様々なサプールたち(少数ですが女性もいます。)と、その環境、活動、教えを楽しむことができます。
 彼らの美しく格好良いその生き様を集めたこの写真集によって、私たちの心にも美しい花が咲いてゆくことでしょう。
(へろへろ隊員 やまだ)

2015.11

『ムーミン谷の十一月 新装版』

トーベ・ヤンソン著,鈴木徹郎訳
講談社/2011年発行/949.83 ヤ


 「ムーミン」というと、多くの人が、「ねえムーミン、こっちむいて・・・♪」で始まるアニメの愛くるしいキャラクターを思い浮かべるのではないでしょうか。
 このキャラクターの生みの親は1914年うまれのトーベ・ヤンソンさん。フィンランドの作家です。昨年は彼女の生誕100年にあたり、今年にかけて様々なイベントや展覧会が催され、今年五月には記念切手が日本でも発行されました。本学の図書館でも昨年、ムーミン関係の本の展示をしました。
 ムーミン、スナフキン、ミイ、など様々な個性的なキャラクターが登場するこのお話のもとは物語です。全部で8冊の物語があります。今回ご紹介する『ムーミン谷の十一月』はその最終巻です。
 ムーミンの物語の舞台は、北欧の厳しくも美しい自然のなかにあります。そして、ムーミンたちは、11月には冬眠に入ります。雪にすっぽりと覆われる冬の間は眠って過ごすのです。その11月、ムーミン一家に会いたくなってあちこちからムーミン谷に集まってきたフィリフヨンカなどの5人。ところがムーミン一家はどこかへ旅に出たあとでした。そこで、この5人にスナフキンを加えた6人が、仕方なくムーミンの家で共同生活を始めます。心のどこかに何かを求めてやってきたこの5人は、その共同生活の中で何か得て一人ずつムーミン谷を後にしていきます。この物語には、ムーミン一家は登場しません。物語の最後に冬眠のために帰ってきたムーミン一家を乗せたヨットの影が見えるだけです。でもその存在感はたっぷりと感じられます。
 ムーミンの物語は全体に楽しくてユーモアにあふれていますが、深い人間洞察に基づく物語で、大人が読んでも十分楽しめます。特にこの『ムーミン谷の十一月』はそのような本だと思います。
 「ムーミン」には、ほかにも、弟のラルス・ヤンソンと創ったとされる『ムーミン・コミック』全14巻もあります。物語とはまた違った魅力があります。こちらも是非手に取ってみてください。
(へろへろ隊員 ひらい)

2015.12

『赤毛のアン クリスマス・ブック』

C.S.コリンズ他著, 奥田実紀訳
東洋書林/2000年発行/594 コ

 12月のイベントといえばやっぱりクリスマスですね。クリスマスに向けて街中は華やかでロマンチックな雰囲気に包まれます。今回おすすめする本は不朽の名作『赤毛のアン』より『赤毛のアン クリスマス・ブック』です。
 みなさん、『赤毛のアン』を知っていますか?本で読んだことがあるという人も、アニメで見たことがあるという人も多いのではないでしょうか。『赤毛のアン』はカナダの作家L・M・モンゴメリが1908年に発表した小説です。『赤毛のアン』から『アンの想い出の日々』までの全9冊のシリーズがあります。昨年、日本で初めて『赤毛のアン』を翻訳し普及させた村岡花子さんの生涯を描いたNHKの連続ドラマ「花子とアン」が放送され、さらに関心が高まったのではないでしょうか。また、作品の舞台となっているカナダのプリンスエドワード島には、作中のアンの家であるグリーンゲイブルズが実際にあり、毎年多くの観光客が訪れるそうです。
 『赤毛のアン』シリーズにはクリスマスの場面が登場します。主人公アンがグリーンゲイブルズに来てから二度目のクリスマスは、全シリーズを通して最も思い出深い場面のひとつと言われています。他にも、物語の中ではアンはどこにいてもクリスマスにはグリーンゲイブルズに帰って過ごします。贈り物の交換、季節の飾り付け、クリスマスツリー、お祝いの服装、アンが楽しんだ催しや、特別なごちそうとおもてなし・・・。本書では美しい挿絵と共に、クリスマスを楽しく過ごす為のお洒落な小物やおいしそうな料理が紹介されています。アンが過ごしたクリスマスがどんなに素敵なものであったのかを本書を通してかいま見ることができます。
 本を開くとそこにはゆったりとした贅沢な時間が流れています。アンの生きたヴィクトリア時代のスタイルのクリスマスに夢が膨らみます。ずっと手元に置いておきたくなるような素敵な一冊です。今年のクリスマスは本書とともにレトロかわいいアン風クリスマスを過ごしてみてはいかがでしょうか。
(へろへろ隊員 かわむら)

2016.1

『だいじょうぶ だいじょうぶ』

いとうひろし作・絵/講談社
1995年発行/E イ

“おじいちゃん”が“ぼく”の手をにぎり、唱えてくれる魔法の言葉。
「だいじょうぶ だいじょうぶ」

まだ小さかった“ぼく”に、世界は広いものだと教えてくれた“おじいちゃん”。
家の近くを、手を繋いでのんびりと歩くだけの小さな冒険が、“ぼく”の世界を魔法のように広げていく。
どんどん広がっていく世界の中で、新しい発見や出会いが“ぼく”をわくわくさせてくれる。
でも。
世界が広がれば、楽しいことだけじゃなくて、怖いことや困ったことにも出会うんだ。
乱暴な子や、怖い犬、タイヤをきしませて走る車。
お勉強は難しいし、あちこちに病気やばい菌がうようよしている。
世界は広くて楽しくてとっても怖い。
“ぼく”は怖くて、心配で、元気がなくなっちゃうんだ。
でも。
そんな時はおじいちゃんの魔法の言葉。
「だいじょうぶ だいじょうぶ」

おともだちと仲良くなれなくても「だいじょうぶ だいじょうぶ」。
飛行機が落ちてきそうだと思っても「だいじょうぶ だいじょうぶ」。
転んだって「だいじょうぶ だいじょうぶ」。
“おじいちゃん”が“ぼく”の手をにぎってそう言ってくれるだけで、“ぼく”も「だいじょうぶ だいじょうぶ」と思えるんだ。
うん!「だいじょうぶ だいじょうぶ」

身近な人の「だいじょうぶ だいじょうぶ」という言葉ほど安心できるものはありません。いとうひろしさんの優しい絵と言葉に癒される素敵な一冊です。
この本を開いてみれば、私たちも「だいじょうぶ だいじょうぶ」。
(へろへろ隊員 やまだ)

2016.2

『ちいさなちいさな王様』

アクセル・ハッケ作, 那須田淳, 木本栄共訳
講談社/1996年発行/943.7 ハ

 今回ご紹介するのは、ドイツでベストセラーとなった小さな物語。そのタイトルも『ちいさなちいさな王様』です。
 ある時、サラリーマンの「僕」のところに人差し指くらいの大きさの十二月王二世と名のる王様が現れます。そして言うのです。 「おまえのところ」では「どうしてはじめにいちばん大きくて、次第に小さくなって消えていくっていうふうにならないのかね」。つまり、「王様のところ」では、大人として生まれて、年を取るにしたがって小さくなって消えていくというのです。そして、赤ちゃんからだんだん大人になっていく「おまえのところ」は「非論理的だ」と言います。何故でしょうか。
 王様は言います。
 王様のところでは、小さいほど偉いのだけれど、小さくなればなるほど、多くのことを忘れ「いろんなことから解放されて、頭の中は、真っ白な自由な空間ができるから、そこを遊びや空想で埋めるのだ。」「おれたちには、これから楽しみにできるものが待っているのだからな。わくわくするではないか」と。
 また、こうも言います。
 「おまえたちが、どんどん大きくなっていくっていう話は、やっぱり本当は違うのではないかと思う。」「おまえたちは、はじめにすべての可能性を与えられているのに、毎日、それが少しずつ奪われて縮んでいくのだ。」「幼いうちは、知っていることが少ないかわりに、想像の世界がやたらと大きいのではなかったかね」
 物語では、サラリーマンが王様の部屋を訪れて夢の箱の話を聞いたり、王さまをポケットに入れて街を散歩して竜に出会ったりと、だんだん小さくなっていく王様とサラリーマンとが過ごす時間を描いています。ファンタジーとしても楽しめますが、ところどころにちりばめられた言葉にハッとさせられます。
 ミヒャエル・ゾーヴァのイラストもたっぷり楽しめる贅沢な本ですが、子どもたち、そしてお年寄りの方々と接する時、思い出していただきたい本です。
(へろへろ隊員 ひらい)