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へろへろのおすすめ本

へろへろのおすすめ本
図書館に時々出没するかえるのへろへろ。
住処は大学横の田んぼだという噂(田村山とも!?)。
ふらりとやってきては豆知識をつぶやくのが趣味なのだとか。
へろへろ隊長のもと、隊員である司書が本をおすすめしていく。
《 2014年度 》

2014.4

『子どものための美しい国〈新版〉』

ヤヌシュ・コルチャック著、中村妙子訳
晶文社/2012年発行/989.83 コ


 今年にはいって、東京都内のいくつもの公共図書館で、300冊以上の『アンネの日記』とその関連書籍が損壊されるという悲しい事件がおこりました。この『アンネの日記』の著者として有名なアンネ・フランクはナチスのユダヤ人強制収容所で15才の生涯を閉じた少女ですが、今回ご紹介する物語の著者、ヤヌシュ・コルチャックも強制収容所のガス室でなくなったポーランドのユダヤ人です。
 コルチャックは、小児科医で、軍医としても何度かの戦争に従軍した陸軍少佐であり、作家としても名を知られていました。しかし、身命を賭して力を注いだのは、ユダヤ人の孤児のための施設の維持とそこでの子どもたちの教育でした。彼はそこで子どもたちと生活を共にし、子どもを「未完成の大人」としてではなく、ひとりの人間として尊重するという考えのもと、そこに子どもたちにとっての理想の社会を作ろうとしたのです。そして、最後には、彼を救おうとする多くの人々が差しのべる手を振り切り、200人の愛する子どもたちとともにナチスのガス室に消えたのです。
 『子どものための美しい国』は、このようなコルチャックの思いが詰まった寓話です。父王の死によって、幼くして絶対的な権力を持つ王様になってしまったマットが、子どもにとって理想的な国を造ろうと、誠実に、文字通り寝食を忘れて改革に奔走します。子どもの思いを大人にも分からせるため、子どもの国会をつくり、子どもの新聞を発行し・・・。しかし、改革は失敗し国民には見放され、周囲の国々に攻め込まれてマットはたった一人孤島に流されてしまうのです。
 この本は、子どもたちにとっては自分たちの気持ちを代弁してくれる書であり、大人にとっては子どもの気持ちを理解し「子どもの権利」を尊重したうえでの教育の在り方を考えさせてくれるものです。そして、何より、大変大部であるにもかかわらず最後まで飽きさせずに読ませてくれるとても楽しい本です。
 コルチャックの人生に興味のある人は『コルチャック先生』(近藤二郎著/朝日文庫)を読んでみて下さい。 
(へろへろ隊員 ひらい)

2014.5

『ももこのいきもの図鑑』

さくらももこ著
マガジンハウス/1994年発行/914.6 サ


 さくらももこが幼少から現在まで出会った動物達とのエピソードが、1話につき4~5ページと短く綴られたエッセイ。短いながらも面白い内容で、さらっと読めるので活字に慣れていない人も読みやすいと思います。
 猫やカブトムシなど私達も飼ったことのある動物から、ラクダやクジャクなどの一般家庭では飼えないような珍しい動物まで語られていて、自分達が子どもの頃に出逢った動物との思い出とあわせながら読むとさらに面白さが増します。
 動物を飼うエピソードの他に、サンマを食べる外国人の話や食用ガエルへの思いなど、さくらももこの独特の絵を文章に添えた話もあります。その中でも、私が一番衝撃的だった話は、ももこが旅行先の韓国で見つけたポンデギという、日本でいうと蚕のさなぎを、韓国では炒ってファーストフード感覚で食べる習慣があるというエピソード。その衝撃的な見た目と味が、ももこの文章から伝わってきます。
 生き物を飼うということはその生き物が死ぬ時に立ち会うということ。それを多く経験してきた中で、ももこ自身はこの「いきもの図鑑」を「死にもの図鑑」とも言っています。「生き物を飼うということはどういうことか」というももこの問いに対して、ももこの夫は「出会ったときから別れは始まっているのだ。動物を飼うということは、そんな悲しみをあえて余計に背負うことなのだから、よほどの覚悟で飼い始めねばならない。」と言います。この夫の言葉に答えた「それでも生き物との楽しい時間はかけがえのないものであるし、別れは覚悟の上である」というももこの言葉から動物への愛情がとても伝わってきます。
(へろへろ隊員 こもだ)

2014.6

『21歳男子、過疎の山村に住むことにしました』(岩波ジュニア新書)

水柿大地著/岩波書店/2014年発行/318.6 ミ

 「夜が明けたようだ」
 耕作放棄された土地に生える木々がつくる物理的な影や、後継者不足や若者の減少によりできる心理的な影、それら二つの影に包まれた地域を表現した「夜」は、全国各地に急速な勢いで広がっています。
 そんな「夜」が明けることを祈って、積極的に地域おこしに取り組むある地域に、大学を休学し協力隊として参加し、最終的には定住することとなったのが本書の著者です。
 彼はなぜ大学を休学してまで地域おこしに参加したのでしょうか?
 それは、2009年に当時の彼女に振られたことから始まります。
 振られた理由がよくわからないまま別れることとなり、とてつもなくヘコみひたすら泣いて泣いて泣きまくったその後、著者は徐々に元気になりながらも、自己分析を繰り返します。最初は振られた理由を探すため容姿や性格から始まった自己分析は、やがて、学生としての自分の時間の過ごし方への疑問へと繋がります。なぜ法政大学現代福祉学部現代福祉学科を選んだのか?自分の学びたいことは農山村や福祉分野だからではなかったのか。
 自分の学びたいことを明確にして大学生活を送ることの大切さに気がついた著者が選んだのは、総務省主管事業「地域おこし協力隊」でした。当時募集があったのはたった4つの自治体。その中で、唯一農山村での活動が入っていた岡山県美作市に応募し、無事採用。
 不安と共に飛び込んだその活動は、東京で育った著者にとって驚きの連続、目から鱗の毎日です。高齢化などにより放棄された棚田の再生から始まった活動は、当初ひたすら草刈りの日々。初めて使う草刈り機に翻弄されつつも、「ブレーキのついていない悪い大人」たちや孫のように接してくれる地域の高齢者たちなど、たくさんの人々との出会いと、活動の手応えが、著者に幸せな目標を抱かせてくれます。
 本書では、地域活性化のために行った様々な活動が丁寧に描かれています。それと同時に、彼の生き方に影響を与えてくれた人々とのたくさんの出会いも描かれています。
著者や協力を受けた地域の人々が「夜が明けたようだ」と感じたその夜明けを、ぜひあなたも感じてみてください。
(へろへろ隊員 やまだ)

2014.7

『だれも知らない小さな国』

佐藤さとる著、村上勉絵/2010年発行/講談社/913.6サ

 今年の4月、『図書館戦争』などで知られる作家、有川浩さんの新刊『コロボックル絵物語』が出版されました。この本は、佐藤さとるさんの『だれも知らない小さな国』に始まる「コロボックル物語」の続きを佐藤さんから託されて書かれた最初の本です。
 今回のお薦め本は、有川さんも子どもの頃愛読していたという『だれも知らない小さな国』です。
 小学校3年生の「ぼく」は、とりもちを作るためにもちの木をさがして一人で山に入ったとき、まわりを崖や木々に囲まれたひっそりとした小さな三角平地を見つけます。そこには冷たい水が湧く小さな泉と、ゆったりと座れる枝を持つ大きな椿の木もありました。その三角平地が気に入った「ぼく」は、一人でこの場所に通い、草を刈って地ならしをしたり、道をつけたりして居心地の良いものにしていきます。春には椿がきれいな花をつけました。そして、そこには何か不思議なものがいることに気づきます。「ぼく」は、いつかこの三角平地を自分のものにすることを決意します。町へ引越し、中学に進学し、戦争で父親を亡くし、就職したあとも、その決意が変わることはありませんでした。そこに小屋をたてたり、池を作ったりしていた「ぼく」の前に、子どもの時に一瞬見た、不思議なもの -「こぼしさま」と言われる小人たち- が現れます。この三角平地は「こぼしさま」(コロボックル)たちの住む土地で、自分たちを助けてくれる人間を長い時間をかけて探していたのです。そこから、その三角平地を守るための「ぼく」と「こぼしさま」たちの活動が始まります。また、子どもの頃に三角平地でたった一人、一度だけ出会った女の子との再会も用意されています。
 この本が最初に発行されたのは、1959年でした。当時小学生だった私はこの本に夢中になりました。そして、三角平地と「こぼしさま」は今も私の中に生き続けています。私より一世代若い有川さんも夢中になったというこの物語、さらに一世代若い皆さんにとってもきっと楽しい物語だと思います。
(へろへろ隊員 ひらい)

2014.8

『ラチとらいおん』

マレーク・ベロニカ文・絵
福音館書店/1965年発行/E ヘ


 「こわくなんかないぞ。ぼくには、“らいおん”がついているんだから!」
 この本が最初に出版されたのは、1965年でした。それから40年以上経った今でも、世界中の子どもたちに勇気を与え、広く愛されている絵本です。
 今回のおすすめ本は、弱虫な少年ラチが強く成長していく過程に、読者も勇気づけられる『ラチとらいおん』です。
 世界中で一番弱虫な少年ラチの夢は、飛行士になることでした。しかし、犬や暗いところが怖く、果ては友達さえも怖くて仲間はずれにされ、いつも泣いてばかりいました。そんなラチは、強くてかっこいいライオンの絵が好きでした。ある朝目を覚ますと、赤い小さな“らいおん”がラチの前にいました。ラチは、あまりにもちっぽけな“らいおん”をみて、小バカにしたように大笑いしました。しかし“らいおん”は、そんな彼を押し倒し、椅子を片手で持ち上げて、「ラチを私のように強くする」と言い、2人で毎朝特訓を始めました。ラチは“らいおん”と一緒にいることで、怖くて近づけなかった犬の前を通り、暗い部屋にクレヨンを取りに行くことができました。ついには、いじわるな男の子から友達のボールを取り返すことができました。いつの間にか“らいおん”はいなくなっていました。ライオンのように強くなったラチには、もう“らいおん”がいなくても大丈夫だったのです。
 この絵本の特徴は、可愛らしい絵と、シンプルな文章だと思います。強くなったラチに、「彼はきっと飛行士になれるでしょう」という言い切った文章で、力強さを表現していると思います。
 以前、とあるテレビ番組の「大人の絵本特集」で、この本が紹介されたことがきっかけで、今回この本をおすすめ本にしました。この本は子どもに勇気を与えるだけではなく、大人も、「ラチ」と「らいおん」、どちらの視点で読むかによっても楽しめる絵本だと思います。是非手にとって読んでみて下さい。
(へろへろ隊員 こもだ)

2014.9

『脱!スマホのトラブル』

佐藤佳弘著/武蔵野大学出版会/2014年発行/547.4833 サ

 iPhone6や新型スマートフォンの発売に伴い、更に加熱するインターネットの世界。総務省の発表によると、平成25年末のスマートフォン世帯保有率は、前年より13.1ポイント増の62.6%となっています。平成22年末が9.7%だったことを考えると、恐ろしい勢いで普及が進んでいるといえます。そして、その普及と共に右肩上がりで増えているのが、スマートフォンを使った新しいサービス、TwitterやFacebook、LINEなどによるトラブルです。
 利用が便利になればなるほど、インターネットやインターネットの世界に点在する人々と簡単に繋がります。個人情報が漏れたり、様々な誘惑が押し寄せてくる可能性が多いのも、インターネットが生活に浸透している以上仕方のないことといえるかもしれません。今や、スマートフォンやパソコンを持っていない人の方が少数といえます。それ故に、様々なトラブルが起こりやすく、へたをすれば、自分が被害者どころか加害者になる可能性もあります。
 本書は、著者が学校などで行っている「スマホの危険」や「正しい使い方」についての講演をベースとし、より多くの人が理解しやすいよう平易な言葉でトラブル別にまとめられた、わかりやすい指南書となっています。例えば、友だちとの楽しかった思い出の写真をインターネットにアップすることは大丈夫なのでしょうか?たとえ悪意はなくても、肖像権の侵害となり、トラブルになることもあります。このように、様々な例をひとつひとつわかりやすく解説しています。
 著者は「ネット社会で一番危険なのは無知なこと」だと強く訴えています。何が危険で何がトラブルの元となるのか、知らないことはなによりも危険な状態と言えます。本書ではスマートフォンだけではなく、インターネット社会における基本的なルールが掲載されています。知識をきちんと身につけ、安全にスマートフォン、ひいてはインターネットを使いこなしましょう。
(へろへろ隊員 やまだ)

2014.10

『読む力は生きる力』

脇 明子著/2005年発行/岩波書店/019.53 ワ

 秋が急速に深まってきました。秋といえば「読書の秋」。でもそれも、最近では以前ほど聞かれなくなってしまいました。今、私たちの周りには様々なメディアがあふれています。本を読まなくてもいろいろな知識や情報を得ることができますし、楽しい映像もたくさんあります。そのような中で、読書はどのような意味を持つのでしょうか。読書は本当に大切なのでしょうか。この本は、このことを赤ちゃんから思春期に至る子どもの成長との関わりの中で考えています。
 絵本を読んでもらうことから始まる子どもの読書は、続いて幼年文学、児童文学と自身で読んでいくなかで、子どもたちに「書き言葉レベルの言葉を使う力」「想像力」「全体を見渡して論理的に考える力」をつけてくれる、と著者は述べています。この力は子どもたちがこの社会で生きていく為の不可欠な力であると同時に、この力こそが本を読む力であり、幼い頃からこの力をつける読書をしなければ、読書を深く楽しむことも、生きる為の力もつかないと著者はいいます。このことを赤ちゃんからの発達段階に沿って、多くの子どもの本を実例にあげながら、分かりやすく、説得力を持って書かれています。そして、このような力を身につけるためには、どのような本が、なぜいいのか、ということも丁寧に示されています。
 とはいっても、この本は決して難しい本ではありません。とても読みやすく、そして、幼い頃からたくさんの子どもの本をたっぷり楽しんできたというこの著者の本には、本を読む楽しさがあふれています。たくさんの子どもの本が登場し、読んでいると何より、まずは自分自身が子どもの本読みたくなってしまいます。 子どもや子どもの本に関わる人たちに、是非読んでいただきたい一冊です。
(へろへろ隊員 ひらい)

2014.11

『町長選挙』

奥田英朗著/文藝春秋/2006年発行/913.6オ

 「普通の人の人生は、リタイアしてフェードアウトするけど、権力者の人生は終わりが死しかないわけ。だからみんな過剰に死を意識するんだな。」
 今回のお薦め本は、トンデモ精神科医・伊良部シリーズ3作目の『町長選挙』です。
 このシリーズには、伊良部総合病院の院長の息子で、精神科医の伊良部一郎が登場します。好奇心旺盛で子どもっぽい性格の彼は、注射が大好きで、訪れる患者にはとりあえず注射をします。患者は、伊良部の奇妙な発言と行動に流されつつも、最後は心の病を克服していきます。伊良部と患者とのやりとりをコメディチックに描いています。奥田英朗作品の中でも人気のシリーズです。
 『町長選挙』はいくつかの短編が収録されています。私は特にその中でも「オーナー」という話が好きなのでご紹介します。
 主人公の田辺満雄は、日本一の発行部数を誇る新聞社の代表取締役会長であり、プロ野球界で人気の球団のオーナー。政界にも影響を与える権力者である。70歳を超える高齢の満雄は、プロ野球界の再編を図ろうとして世間から反感を買った上に、攻撃的な発言でさらにメディアを賑わせている。そんな彼も、毎日待ち構える報道陣のカメラのフラッシュや、暗くて狭い場所に恐怖を覚えるようになる。精神科医の伊良部に相談すると、死を連想させることに恐怖を覚えるパニック症候群であることが判明。克服するには、今の仕事をやめて、余生を静かに暮らすことだと言われる。しかし自分にはまだ日本を変えていく使命があると言い張り…。
 今回も伊良部の奇妙な治療法に振り回される展開は健在です。パニック症候群を克服するために、伊良部と満雄は追いかけてくるカメラマンを振り払いながら、オープンカーで夜の公道を駆け抜けたり、運動会の騎馬戦のように報道陣の前に現れたりするうちに、その奇妙な行動がメディアに取り上げられてしまいます。しかしラストは伊良部シリーズらしく、清々しい終わり方をしています。このシリーズの中でも「オーナー」のラストの締め方が好きです。
 『町長選挙』と前作との大きな違いは、主人公が、実在の人物をモデルにしていることです。大手新聞社社長や、IT企業家、有名女優などが登場します。前作では、様々な職業の一般人が、心の病を抱えて伊良部の元を訪れていましたが、今回著名人を主人公にすることで、テレビの向こう側の人々も自分達と同じ悩みを抱えているのだと、共感していただけるのではないかと思います。このシリーズ1作目の『イン・ザ・プール』、2作目の『空中ブランコ』も合わせて読んで比較すると、さらに面白いので是非読んでみて下さい。
(へろへろ隊員 こもだ)

2014.12

『めづめづ和文化研究所京都』

小栗左多里、トニー・ラズロ著
情報センター出版局/2008年発行/790 オ


 「めづ」。これは古くからある動詞。
「感動する、賞賛する」というような意味だけど、「愛づ」とも書かれるだけに、「愛する」という概念にも近い。 -本文より

 『ダーリンは外国人』などの著作で、外国人である夫との生活やその中で生まれる疑問について描いてきた小栗左多里さんと、語学や文化を愛するトニー・ラズロさんが、今は古語とされる「めづ」という言葉をキーワードに、昔から伝わる文化や知恵を体験し、発見していく本書。章立ててあり、「伝統の作法・たしなみ」や「お寺・神社と町家」「伝統工芸と京のくらし」など、現在の京都で接することができることを取り上げています。それぞれの体験談は小栗さんの漫画で楽しむことができ、体験を元にした感想や考察がラズロさんのコラムで読むことができるのが魅力で、それぞれの文化の簡単な解説もあります。
 たとえば、縄文時代からすでに存在した「弓道」では、射ち方を習い、その歴史と変革していった真髄が描かれています。武器から人としての道を教える武道と変わっていった弓道は、己の心と向き合い精神を鍛錬することが大切だということがわかります。また、華道や茶道のように身近なものから、香道のようにあまり一般的に親しまれていない伝統(京都では身近かもしれません)についても掲載されていて、新たな世界への興味がわいてきます。
 面白いのが最近人気の京都の「町家」で、小栗さんの漫画から風情ある雰囲気が伝わってきてとても素敵です。最近は若い芸術家たちが住むことが多いというのも納得です。その他、扇の作り方・遊び方や、風呂敷の包み方、精進料理など、様々な和文化を楽しみ、知ることができます。また、著者二人の捉え方の違いも、生まれた国・育った環境の違いを感じ、とても面白いです。
 可愛らしい絵柄と外国人ならでの見方で描かれた、知っているようで案外知らないことが多い和文化に気軽に触れてみませんか? 
(へろへろ隊員 やまだ)

2015.1

『文字と書の歴史』(「知」のビジュアル百科13)

カレン・ブルックフィールド著、浅葉克己日本語版監修
あすなろ書房/2004年発行/801.1 フ


 人は何千年も前から、自分たちの経験したことやそこから得た知識や知恵を周りの人や子孫に伝えようとしてきました。最初は、それは人の頭の中に蓄えられ、口頭で語り伝えられていました。しかし、その伝えたいという思いは、洞窟の岩壁や建物の壁に記録された絵となり、その絵は次第に記号としての文字に変わっていきます。紀元前3000年頃にはこのような絵から生まれた絵文字が使われていたようです。この文字の誕生が様々な情報を記録することを可能にし、さらに、その文字がエジプトのパピルスやメソポタミヤの粘土板のように持ち運びができる媒体に記録されるようになって、情報は時間と場所とを超えて伝えることが可能になりました。
 現在の「本」の形ができたのは紀元前2世紀頃だといわれています。ただ、その「本」は紙ではなく羊の皮(羊皮紙)でできていて、字も手書きという、とても貴重なもので裕福な人しか手にすることのできないものでした。ヨーロッパではこの形の「本」が1500年以上も続きます。その後の印刷術や製紙法の発明・発達、そして本の大量生産が可能となる中で、情報も一部の人のものから多くの人が共有することができるようになりました。
 この本は、何千年も前から、世界のいろいろな地域で人がどのような文字と媒体を使って情報を記録しようとしてきたかを、多くの図版を使って紹介してあります。その図版はどれもとても美しく興味深いものばかりです。これを見ていると、人類が情報を記録し、伝えるということにどれほどの思いを込めていたかがよく分かります。
 現在、情報は様々な情報機器によっても伝達されるようになり、私たちの周りには多くの情報があふれています。このような時代だからこそ、情報を記録し、伝達することにかけてきた人類の思いを振り返ってみてはどうでしょうか。
(へろへろ隊員 ひらい)

2015.2

『図書館からの贈り物』

梅澤幸平著/日外アソシアーツ
2014年発行/016.2161 ウ


 著者は、北海道立図書館員から、滋賀県の旧甲西町立図書館長を経て、滋賀県立図書館長を務められた梅澤幸平氏。
 滋賀県は、1981年から開始された図書館振興策により、全国でも有数の図書館先進県に成長してきました。本書には、県内の図書館振興策が開始された頃に来県し、その後もその政策に関わってきた著者の図書館への思いと、その過程が綴られています。
 その中には、図書館に足を運んでもらうための様々な工夫も書かれています。自館所蔵資料を使って、世の中の話題を捉えた週替わりの特設棚を設置し、ロックコンサートや写真展を催すことで、図書館の敷居を低くすることに努められました。甲西町では、町の桜名所マップを住民の情報を元に作成したことで、町に来たばかりの住民にも好評を得ました。
 滋賀県は近畿圏で唯一公文書館がなかったので、館長退職後は、図書館での経験を活かして、貴重な文書を整理し利活用できるように努めました。歴史文書に親しんでもらうために、世間の話題に合わせた月替わりのミニ展示や、一般向けに外部講師を招いての講演会、職員向けに古文書解読講座を開き、たくさんの参加者を得ました。
 著者は本書の中で、専門職である司書に関して、非正規職員を雇い、期間満了になれば切り捨てていく指定管理者制度の図書館への導入を批判しています。行政がコストのことを考えて職員体制を疎かにしたのでは将来的に住民の暮らしにプラスにならない、と説いています。経験豊富で専門性が高い正規職員の司書を安定的に配置してこそ、住民のニーズに答えられるとしています。実際に、甲西町立図書館時代には、司書は全員正規職員で運営を開始したところ、司書の対応の素晴らしさは町の評判になり、銀行の支店長がお忍びで偵察に来るほどで、図書館職員はその後も町の職員の接遇に関しての手本となりました。
 お固いイメージがある図書館ですが、長年図書館の仕事に従事してきた著者のエピソードはそんなイメージを和らげてくれるような面白い内容がいくつもあり、ひとつの読み物としても読みやすいと思います。その中で、著者の図書館への熱い思いを感じてもらえればと思います。是非読んでみてください。
(へろへろ隊員 こもだ)