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へろへろのおすすめ本

へろへろのおすすめ本
図書館に時々出没するかえるのへろへろ。
住処は大学横の田んぼだという噂(田村山とも!?)。
ふらりとやってきては豆知識をつぶやくのが趣味なのだとか。
へろへろ隊長のもと、隊員である司書が本をおすすめしていく。
《 2011年度 》

2011.8

『ブータンに図書館をつくる-青年海外協力隊隊員の730日-』

石田孝夫著/明石書店/1993年発行/016 イ

青年海外協力隊員としてブータンに派遣された著者。730日におよぶブータンでの生活と図書館づくりに奔走した日々の記録は、ただひたすらおもしろい。日本での常識が通じない不思議の国ブータンでの奮闘ぶりをぜひ、楽しんでほしい。
(へろへろ隊員 やまだ)

2011.9

『神様のカルテ』

夏川草介著/小学館/2009年発行/913.6 ナ 1

 栗原一止は24時間365日営業の本庄病院で働いている少し変わった内科医です。
 24時間365日の看板を出しているせいで3日寝ないことも日常茶飯事な病院です。
 そんな病院で働いている一止は、大学病院の医局から誘いを受けていました。一止自身も先端医療に興味がないわけではなかったので、医局に行こうか、でも大学病院などに「手遅れ」と見放された患者と向き合う医者が病院にいてもいいでははないのか、と、悩んでいました。
 そんな一止の背中を押してくれたのが、大学病院で「手遅れ」と見放された癌患者・安曇さんからの思いがけない贈り物でした。
 一止の周りには、一止本人だけでなくたくさんの個性的な人たちで溢れています。一止と周りの人々との掛け合いもおもしろいですが、その中にも思わず泣けてくるような感動があります。
(へろへろ隊員 みやなが)

2011.10

『妖怪アパートの幽雅な食卓~るり子さんのお料理日記~』

香月日輪著/講談社/2009年発行/913.6 コ

 るり子さんは小料理屋をもつ事が夢でしたが、志半ばで殺されてしまい、体をバラバラにされてしまいました。現在は、残された両手だけで妖怪アパートの賄い婦をしています。
 住人のみんなが「るりるり」と呼ぶるり子さんが本編(『妖怪アパートの幽雅な日常』全10巻/913.6 コ 1~10)で作ったお料理のレシピを日記風に書いた本です。他にショートストーリーも収録されています。
 文章がうまく書かれていて、本を読んでいると思わず作ってみたくなる一冊です。
(へろへろ隊員 なかがま)

2011.11

『ポプラの秋』

湯本香樹実著/新潮社/1997年発行/913.6 ユ

 湯本香樹実には、タイトルに「春」「夏」「秋」がついている作品があります。最も有名なのは『夏の庭』です。小学6年生の男の子三人が、人の死ぬところを見たいと孤独に暮らしている老人を「観察」し始めるのですが、やがてその老人との間に深い交流が生まれていく、という夏の物語です。今年の夏の「新潮文庫の100冊」にも選ばれていましたので、読まれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。そして、今回ご紹介するのは、季節に合わせて『ポプラの秋』です。
 主人公の千秋は、6歳の夏に突然の事故で父親を亡くし、大きなポプラの木がある小さなアパート-ポプラ荘-に母親と引越してきます。母親は、夫の死を受け入れられないまま、それでも生きるために慣れない仕事を始めます。そんな母親を気遣いながら不安で緊張した日々を過ごすうちに、千秋は心身ともに病んでしまいます。学校に行けなくなった千秋は、母親が仕事の間、アパートの大家さんの部屋ですごすことになるのですが、その大家さんは、何とも不思議な近寄りがたい雰囲気を持ったおばあさんでした。おばあさんは、自分は死んだ人への手紙を預かり、自分があの世に行く時に持って行く郵便屋なのだといい、千秋の手紙も届けてあげるといいます。ポプラが黄金色に色づき、やがて葉を落としていく季節の中で、千秋は毎日手紙を書き、次第に悲しく不安な思いから解放されていきます。
 物語は25歳になった千秋がおばあさんの死の知らせを受け、それをきっかけに当時を思い出すところから始まります。今の千秋は、流産し、恋人に去られ、仕事にも自信をなくし、大量の睡眠薬を眺めてすごしています。そんな千秋が葬儀のため再びポプラ荘を訪れ、昔と変わらないポプラの木など多くの人や物との再会と新たな出会いのなかで、生きる力を取り戻していきます。ポプラの黄金色の光りと風を感じながら、心にしみる物語を楽しんでください。そして、湯本香樹実の世界が気に入られた方は、『春のオルガン』もどうぞ。
(へろへろ隊員 ひらい)

2011.12

『ロックフェラー回顧録』

デイヴィッド・ロックフェラー著/新潮社/2007年発行/289.3 ロ

 ロックフェラー家は<栄光の一族>か、<影の支配者>か。

 デュポン家、メロン家に並ぶアメリカ三大財閥のひとつであるロックフェラー家は、始祖J.D.ロックフェラーによって石油産業を中心に急激な発展を遂げ、財閥となった一族です。その孫であるデイヴィッド・ロックフェラー現当主が一族について記したのが本作となります。
 ロスチャイルド家に並んで陰謀説が囁かれるロックフェラー家ですが、この回顧録を読み進めていると、物事の表裏がよくわかります。そもそもインターネットであがってくる「ロックフェラー家」の情報は、あまりに膨大過ぎて、どこまで虚偽で真実なのか測ることができません。ロックフェラー財閥やロックフェラー財団などの公的な活動を知ることはできても、一族の子どもたちがどのように育てられ、どのように育っていくのか、そこからは何も読み取ることができません。ですが、この回顧録では、彼らの生い立ちから一族の中での立ち位置、たとえ資産家であってもはじめからなんでも好きに行うことができたわけではないことがよくわかります。もちろん、著者の主観になりますので、そこには別の側面もありますが、銀行家として、フィランソロピストとして活動するに至った著者の確固たる信念を読み取ることができます。私たちとは全く別の次元で生きる彼らの人生の一端を覗いてみるのは、とてもおもしろいことだと思います。
 ハイリスク・ハイリターンの世界で生きる彼らの世界をどうぞご覧ください。

 ………彼らの動かしているお金のあまりの額の大きさに、段々と金銭感覚がおかしくなってくるのも本作のおもしろいトコロ…かもしれません!
(へろへろ隊員 やまだ)

2012.1

『ルノワールの絵本 小学館あーとぶっく4』

結城昌子著/小学館/1994年発行/723.35 ユ

 ピエール・オーギュスト・ルノワールは、フランスの印象派の画家ですが、最初から画家ではないようです。
 ルノワールは、1841年フランスの陶芸で有名な町・リモージュに仕立て屋の息子として生まれました。13歳の時から陶器の絵付師として修行をし、家具や扇子にロココ風の装飾をして生計を立てて、21歳の時にエコール・デ・ボザール(国立美術学校)の生徒となり、グレールM.G.C.Gleyreのアトリエに入りました。そこで、後に有名になるモネ、シスレー、バジールなどの画家と親交を結びました。ルノワールは、「わたしにとって絵画とは、愛らしく、楽しく、美しいものでなければならない。」という言葉を残しているように、愛らしい、美しい肖像画と、晩年は美しい裸婦像を残しました。
 この本は、後世に残されたルノワールの絵画がうまくお話とつながって表現されている本です。
 私は今までルノワールの絵画しか観ていなかったので、このような本を知った時、お話も作れる事にびっくりしました。絵画に興味のない人でも、興味のある人でも、わかりやすく読むことができる本になっています。一度手にとって、お気に入りの絵画を見つけてみてはいかがでしょうか?展覧会などに行っても、絵画の見方が変わるかもしれません。
 同シリーズ『小学館あーとぶっく』には、この他に13冊の本があります。(『ゴッホの絵本』723.359 ユ など)

[参考:『世界大百科事典30 ル-ワン』 031 セ 30/平凡社]
(へろへろ隊員 なかがま)

2012.2

『雪の写真家 ベントレー』

ジャクリーン・ブリッグス・マーティン 作
メアリー・アゼリアン 絵/千葉繁樹 訳
BL出版 出版/1999年発行/289.3 ヘ-マ


 雪は、たくさん降り積もると私たちの生活に大きな支障をきたします。今の季節、雪はいやだと思っていらっしゃる方も多いかと思います。でも、空から降ってくる雪の美しさ、雪で覆われた幻想的な銀世界は、古来多くの人々の心を捉えてきました。また、大きさも形もひとつとして同じ形がないという美しい雪の結晶は、今やいろいろなところでデザインとしても使われています。1936年に世界で始めて人口雪を作ることに成功した日本の物理学者、中谷宇吉郎は「雪は天から送られた手紙である」という有名な言葉を残しました。
 今回紹介するのは、そんな雪の美しさに魅せられ、何とかその姿を留めたいと、雪の結晶の写真を生涯撮り続けたウィルソン・ベントレーを描いた絵本です。ベントレーは、アメリカの豪雪地帯にある農村に1865年に生まれました。ほとんど学校へも行かず、一生を農夫として暮らしながら、6000枚以上の雪の結晶の写真をとり続けました。そして、晩年に出版された写真集は、多くの研究者にも影響を与えました。中谷宇吉郎も雪の研究を始めたきっかけは、その写真集にある雪の結晶の美しさだったそうです。 ベントレーの生涯は、家族の愛情に恵まれたものでした。この絵本は、そんなベントレーの生涯と雪への情熱を、あたたかい雰囲気の版画で伝えてくれています。1999年に、アメリカでその年に出版された最もすばらしい絵本に与えられるコルデコット賞を受賞しました。
 雪の結晶の写真を集めた絵本『きらきら』(谷川俊太郎文 吉田六郎写真 アリス館)といっしょに眺めてみてはいかがでしょうか。
(へろへろ隊員 ひらい)

2012.3

『ロートレック荘事件』

筒井康隆著/新潮社/1990年発行/913.6 ツ

銃声が二発、
夏の終わり、
美しい洋館で
惨劇が始まる...。
(表紙カバーより)

ある夏の終わり、ロートレックの絵画に彩られた木内文麿の別荘に招待された「おれ」たち。美しい3人の女性たちと夏の終わりを楽しむはずが、一人、また一人と美女が殺されていく。厳戒な警察の監視のもと、誰が、何故、彼女たちを殺めていったのか-。

叙述に彩られた言語トリック。
だまされていく読者たち。
私はこの本を3度読み返しました。
推理小説を読む時、大概の読者はその文章のなかで犯行を推理し、動機を推理し、犯人を推理します。けれど、1ページ目を開いたその瞬間から私=読者は騙されはじめています。「表紙カバー」にわざわざ「言語トリック、メタ・ミステリー」と銘打ってあり、それを意識して読んでいたはずなのに、なんとなく、の違和感の正体がどうにもつかめません。一人また一人と美女が倒れていくなかで、主人公の語りに隠されている真実が最後にようやく判明したとき、言葉のはしばしに隠されたトリックを確認するためにもう1度1ページ目から読みたどり、自分が最初から騙されていたことに納得します。そして、確認を終えた後、もう1度新たな視点で読み返し、この作家・筒井康隆氏が操る巧みな言語に感動するのです。
日本SF作家御三家と名高いこの作家、SFにとどまらない多彩な作品を生み出し続けています。その作品群のなかでもとりわけ言語の実験的な試みをもったこの作品は、読者への挑戦状ともいえます。
あなたもぜひ、この挑戦を受けてみてください。
きっと、もう一度、読み返したくなります。
(へろへろ隊員 やまだ)