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へろへろのおすすめ本

へろへろのおすすめ本
図書館に時々出没するかえるのへろへろ。
住処は大学横の田んぼだという噂(田村山とも!?)。
ふらりとやってきては豆知識をつぶやくのが趣味なのだとか。
へろへろ隊長のもと、隊員である司書が本をおすすめしていく。
《 2017年度 》

2017.11

『「幸せ」について知っておきたい5つのこと』

NHK「幸福学」白熱教室他著
角川書店/2014年発行/151.6 エ


 私事ですが、11月は友人が二人入籍したり、また一人は出産も控えていたり、とおめでたい出来事が多く続きます。近しい人のお祝い事は、私自身も嬉しく感じるものです。
そのような、日々の暮らしの中で感じる「喜び」、将来について抱く「夢」、家族や親しい人との「愛情」など、人それぞれに様々な幸福のかたちがあります。

 2013年、国連は世界の国民幸福度を発表しました。それによると、幸せを感じている人が多い国の1位はデンマーク。以下、ノルウェー、スイス、オランダと続き、アメリカは17位、韓国は41位でした。そして日本は43位。先進国の中では際立って低い順位でした。経済的に安定し、戦争もない日本に住みながら、私たちはなぜ「幸せ」を感じることができないのでしょうか?
 今回紹介する本は『「幸せ」について知っておきたい5つのこと』という本です。本書は、NHKで放送され、多くの反響をもたらした「『幸福学』白熱教室」の内容を再構成したものです。
 結婚したい。家を買いたい。いい仕事に就きたい。お金持ちになりたい…。人は生きていくうえでたくさんの希望や欲求を持ちます。しかしお金持ちが100%全員幸せな人生を送っていないように、これらが叶ったとしても人は必ず幸せになるわけではありません。この人生の命題を「幸福」を軸に考え直すと、取るべき行動、習慣ががらりと変わります。     
 第一線で活躍する二人の研究者が、最新の研究結果を基に「お金」「仕事」「人間関係」といったテーマについて解き明かしていきます。「宝くじが当たってもあなたの幸福度は変わらない」「後悔から人生の幸せを“逆算"してみる」といったわかりやすく、すぐ行動できるものばかりです。
 「幸福学」の二人のエキスパートが紹介する「幸福学」の最先端とは、一体どんなものなのか。そこに隠された「幸せの鍵」を探っていきましょう。きっとあなたにとっての「幸せの鍵」が見つけられるはずです。ぜひ手にとってみてください。

(へろへろ隊員 あさい)

2017.10

『かかし』

ロバート・ウェストール作,金原瑞人訳     
徳間書店/2003年発行/933 ウ


 10月31日はハロウィンです。ハロウィンは日本でもイベントとして定着してきましたが、その起源はイギリスのケルトのお祭りで、この世の者ならぬ悪霊や魔物が出てくる日とされていました。
 今回ご紹介する本は、ハロウィンと直接関係はありませんが、一人の少年の中に生じた“魔”が恐ろしい魔物を呼び覚ましてしまう物語です。
 舞台はイギリスで、主人公は13歳の少年サイモン。軍人だった父親は、サイモンの幼い頃に戦死していますが、今もあこがれの存在であり、サイモンは父との思い出をとても大切にしています。そして、父の死後、一人でサイモンと妹を育ててくれている美しくて有能な母親は、サイモンにとって最も大切で誇らしい存在です。ところが、その母親が再婚するというのです。母親の再婚は、サイモンにとって、父親への裏切りであり、母親を見知らぬ男に奪われることに他なりません。
 普段は学校の寄宿舎で暮らしているサイモンですが、夏季休暇の間、新しい家で暮らすことになります。その中で、父親となった男と母親、そして新しい父親にすっかりなついている妹へのサイモンの怒りと憎しみ、そして悲しみは、どんどんふくれていきます。そして、そのサイモンの思いは、ついに新しい家の近くにある古い水車小屋に潜む魔物を呼び覚ましてしまうのです。その水車小屋は、40年近く前に二人の男と一人の女が引き起こした陰惨な事件の現場でした。そこに残る邪悪な思いが「かかし」となってサイモンの前に現れ、サイモンの家族を襲おうとするのです。その「かかし」と戦うこと、それは、とりもなおさずサイモンのなかにある憎しみや怒りと戦うことであることを悟りながらも、サイモンは「かかし」に挑んでいきます。
 湯本香樹実の『夏の庭』の中で主人公の少年が読んでいて「すごくこわくておもしろい恐怖小説だ」と言っている物語です。ハロウィンに読んでみてはいかがでしょうか。

(へろへろ隊員 ひらい)

2017.9

『はつ恋』(LLブック)

藤澤和子, 川﨑千加, 多賀谷津也子企画・編集・制作
樹村房/2017年発行/369 フ


 この本を表すLLブックの「LL」とは、スウェーデン語のLättläst(レットレースト)を簡単にした言葉で、「やさしく読める」という意味です。
 そんな意味を込めたこの本は、読むことが難しい人のために、「わかりやすく」「読みやすく」楽しむことができるように作られた本です。ピクトグラムや写真、絵に、平易でわかりやすい文章を添え、様々な立場や、読むことが苦手な人でも理解しやすく楽しむことができます。また、障がいのある人だけでなく、外国人や高齢の人なども読者となります。もちろん、読書に親しんでいる人でも楽しむことができます。

 そんなLLブックとして出版されたこの本は、夏の海辺で偶然出会った青年と女の子のはつ恋の物語が描かれています。
 浜辺で寝転んでいる青年に、ボールをとろうとしてぶつかってしまった女の子。お互いけがもなく別れますが、その後、海の家でまたばったり出会います。青年はどうやら彼女がとても気になる様子。そして、彼女も…。
そんな風に、二人の心の移り変わりと、二人を取り巻く環境が、わかりやすい写真によって描かれています。また、二人の気持ちの移り変わりをよりわかりやすく読めるよう工夫されているのが、それぞれの章ごとに描かれているピクトグラムと簡単な文章です。
 ピクトグラムは、「絵文字」や「絵記号」と言われるもので、伝えたい情報や注意を分かりやすく示した視覚記号です。これらの組み合わせにより、読み手は物語を理解し、読み進めていくことができます。
 段々と縮まっていく二人の様子は、ユーモラスで、でもドキドキとします。
 二人の結末は、ぜひ自分の目で確かめてみてください。

 LLブックは、日本でも出版が重ねられ、様々な分野で広がっています。この「はつ恋」以外にも、本学図書館ではいくつかのLLブックを所蔵しています。ぜひ、その他のLLブックも楽しんでみてください。

(へろへろ隊員 やまだ)

2017.8

『人生で大切なことはみんなマクドナルドで教わった』

鴨頭嘉人著/新潮社
2012年発行/673.97 カ


 1976年から40年ほどオリンピックの選手村での軽食提供を行ってきたマクドナルドが、今年6月にオリンピックのスポンサーから撤退を発表。2020年に東京で開催される東京オリンピックでマクドナルドに代わる飲食について、オリンピック委員をはじめ、内閣官房、東京都、農林水産省、厚生労働省、日本給食サービス協会、日本ホテル協会など官民一体となって検討しています。それほど世界に与える影響の大きい会社、それがマクドナルドです。
 マクドナルドは世界118の国と地域に約30,000店の店舗があり、日本国内だけでも3000に近い店舗数を構える世界有数のハンバーガーチェーンです。

 では、みなさんはそんなマクドナルドをどれほど知っていますか?
 今回紹介する『人生で大切なことはみんなマクドナルドで教わった』の中にこんな文があります。「多くの日本国民が“知っている”マクドナルドは、一部の情報と自分の体験からくる“事実”ではありますが、決して“真実”を言い当てているとは言えません。」
 マクドナルドについて“知っている”つもりの代表格が「マニュアル主義」です。
 マニュアルと言われると、どうしても機械的に思えますが、実はマクドナルドではマニュアルを「自分で成長できる人材づくりの土台」だと考え「なぜそれをやる必要があるのか?」など「なぜ?」を徹底的に追求することで、一つ一つの作業の根本にある理由を、従業員が納得した状態で遂行するようにプログラムされています。

 この本は、お客様満足度日本一/従業員満足度日本一/売上げ伸び率日本一を達成した「最優秀店長」である著者が高校生のバイトでも「輝く人材」に大変身させる「マクドナルド流人材育成術」について書いた本です。
 マクドナルドだけで通用する人材の育成ではなく、何かを成し遂げるとき、人に何かを伝えるとき、など社会でも通用する人材の育成方法について学べる一冊になっています。
 人生で大切なことはみんな「この一冊」につまっています。ぜひ手にとってみてください。

(へろへろ隊員 あさい)

2017.7

『星空の地図』

藤井 旭著/2007年発行
PHP研究所/443.8 フ


 宮沢賢治の代表作の一つ『銀河鉄道の夜』は、読んでいなくてもそのタイトルを知っている人は多いのではないでしょうか。主人公の少年ジョバンニは友人のカムパネルラとともに、夜の銀河を軽便鉄道で旅をします。この幻想的で不思議な旅は、天の川の左岸を北から南十字に向かって進んでいくのですが、そこには白鳥、さそり、双子、ケンタウルス、南十字などの星座が実際の位置関係に基づいて現れてきます。
 賢治は子どもの頃から星が好きで、よく夜空を眺めていたといいます。星を題材とした作品も多く、賢治自身が作詞作曲した「星めぐりの歌」(『銀河鉄道の夜』にも出てきます)という歌もあります。幼いころから眺めていた美しい星空が、賢治にこのような作品群を生みださせたのでしょう。
 賢治に限らず、古来、人は星空を愛し、そこに様々な物語を読み取ってきました。それが星や星座の名前となり、神話や伝説、そして占いなどとも結び付けられてきました。一方でその星や銀河を科学的に解明していくことも人類の大きな課題でした。
 今回ご紹介するこの本はその両方を、写真や図を中心に、とても分かりやすく簡潔に楽しませてくれます。また、見つけたい星や星座の見つけ方も教えてくれています。
 夏休みは夜空の星を見るチャンスです。ジョバンニが旅した天の川も見える季節です。ジョバンニも見たサソリの火アンタレスや、七夕でおなじみの織女星ベガと牽牛星アルタイルなどの星をこの本を参考に探してみてください。また、夏に見えるのであれば、ご自分の星座を探してみるのもいいのではないでしょうか。とてもきれいな本ですのでぜひ一度手に取って見てください。
 そして、『銀河鉄道の夜』の世界もこの機会に楽しんでみてはいかがでしょう。

(へろへろ隊員 ひらい)

2017.6

『マナーとエチケットの文化史』

ベサニー・パトリック著, 上原裕美子訳
原書房/2013年発行/385.9 ハ


 大勢の社会の中で生活する私たちは、人間関係をより円滑にするため身につけた“他人への接し方=マナー”を生活環境の中で身につけていくことが多いと思います。子どもの頃は家族や先生から習い、大人になってからは会社などの働く場で身につけていきます。時には自分自身で勉強することもあるマナーですが、マナーをひとつひとつじっくりと考えてみると、「どうして?」と思うことがありませんか?
 例えば、「ありがとう」と言われた時に返す言葉「どういたしまして」。英語の「Thank you」には「You’re welcome」、ドイツ語の「Danke」には「Bitte」、スペイン語では「Gracias」に「De nada」と返します。いずれも日本語と意味合いは似ていて、お礼の言葉に対して、「別に大したことではありませんよ」と返しているわけですが、実際には何かをしたことによってお礼を告げられています。ただ、その感謝を認めてしまうと、その感謝に対する感謝が生じ、やりとりが延々と続いてしまうため、さらりと受け流せるようやりとりが形式化され、それが礼儀とされているようです。もちろん国や地域によってその方法に差違があり、スペイン語の「De nade」はさらりと流すというよりは、「何でもありません」と、何もしていない風を装っています。
 このように、言葉のやりとり一つをとっても、そこには様々な歴史と意味が含まれています。普段あまり意識していない慣習にも、そこに至る文化史があり、それらを知ることによって、更に正しく身につけていくことができるのではないでしょうか。
 
 今、私たちをとりまく環境は、日本の中だけに留まらず世界に開かれています。家族という小さな単位から、学校、会社、社会、世界と広がっていく環境の中で、自分と他人との距離をうまく保ち、生活していくことはとても難しいと思います。本書は気軽に読めるように章立てで世界のあいさつと作法の文化史を分かりやすく解説しています。マナーやエチケットにまつわるそれぞれの文化を気軽に楽しみ、理解していけば、あなたの人生を少し後押ししてくれるかもしれません。

(へろへろ隊員 やまだ)

2017.5

『きみに贈る本』

中村文則[ほか] 著/中央公論新社
2016年発行/019.9 ナ


 人に自分の本棚を見られると、まるで自分の内側を眺められているようでなんとなくむず痒いような、恥ずかしい気分になりませんか?
例えば一冊や二冊、読んでいる本を見られたとしても特に何も思いませんが、何故か本棚を見られると自分の趣味趣向や思考までその人に読み取られるような錯覚がして少し恥ずかしいものです。

 今回オススメする本は2016年に出版された『きみに贈る本』 という本です。6人の著名な作家が今まで何をどんな風に読んできたのか、それらは人生にどんな影響を与えたのかを自身の人生を振り返りながら語る若い人向けの読書案内の本です。
 作家陣は中村文則、佐川光晴、山崎ナオコーラ、窪美澄、朝井リョウ、円城塔の6人。作家陣は、小説家であるという共通点はあるものの作風は異なり、それぞれのジャンルで注目される書き手です。
 同じ小説でも、語る人が違えば違う小説に見えてくる。そんな違いも楽しめる本になっています。
例えば中村文則は太宰治の『人間失格』を「最強の中二病小説」だと書いていますが、円城塔は「読まない」「太宰治がとても苦手」と書いています。「何を当たり前のことをいつまでもどくどくと書いているのだという気持ちになる」と。
 また夏目漱石の『我輩は猫である』を読んで「バラエティー番組での芸人たちのフリートークに近い」と感じた作家もいれば、「ひとりごとが、だらだら書いてある」「読んでもよいが読まなくてもよい」と感じる作家もいて、その一人ひとりの作品の捉え方に個性があってとても面白い一冊です。

 この本は若い人向けというコンセプトで書かれている為、一つ一つのエッセイの分量を短く、文章も読者に難しく感じさせない工夫をこらしてあります。若い人向けとはいえ、取り上げる本は古典文学など読み応えのあるものも多く、幅広い年代の人が十分に楽しめる一冊になっています。
 ぜひこの本を通して、6人の作家たちの趣味趣向など覗き見してみてください。

(へろへろ隊員 あさい)

2017.4

『夜のピクニック』

恩田陸著/新潮社
2004年発行/913.6 オ


 恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』は、平成28年度下半期の直木賞受賞作品ですが、4月11日に発表された「2017年本屋大賞」も受賞しました。本屋大賞は今年で第14回なのですが、恩田さんは第2回本屋大賞(2005年)も受賞しています。もちろん二度も受賞しているのは恩田さんだけです。今回のお薦め本は、この第2回本屋大賞受賞作『夜のピクニック』です。この本は出版されてもう十年以上たちますが、今でも中・高生への推薦図書リストなどにもよく取り上げられています。
 この小説の主人公は高校3年生です。主人公が通う高校では、伝統行事として毎年秋に全校生徒が一斉に一昼夜かけて80kmを歩き通すという「歩行祭」が行われます。ストーリーはこの「歩行祭」がスタートする朝に始まり、翌朝の「歩行祭」終了とともに終わります。主人公は、高校3年生でたまたま同じ高校の同じクラスになってしまった異母きょうだいの貴子と融。二人の関係は学校では二人以外は知りません。そして、この二人はお互いを気にしながらも大きなわだかまりがあって話をしたこともない、という関係です。貴子は、この二人の間のわだかまりを卒業までに何とかしたくて、この高校生活最後の大きな行事でささやかな賭けをします。「融に話し掛けて、返事をしてもらうこと」。
 皆が80km先のゴールを目指して、体力的には極限状態に向かって、昼も夜もただただ歩き続けるという特殊な状況の中、主人公二人の頭をよぎる様々な思いや、この二人を取り巻く友人たちの状況や思いが描かれていきます。大きなストーリー展開はない小説ですが、読んでいて大変面白く、読後に深い感動を与えてくれます。貴子の「ささやかな賭け」がどうなったかは、ぜひ読んで確かめてみてください。

(へろへろ隊員 ひらい)