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へろへろのおすすめ本

へろへろのおすすめ本
図書館に時々出没するかえるのへろへろ。
住処は大学横の田んぼだという噂(田村山とも!?)。
ふらりとやってきては豆知識をつぶやくのが趣味なのだとか。
図書館公式キャラクターであるへろへろ隊長のもと、隊員である司書が本をおすすめしていく。
おすすめ本はカウンターにあります。
《 2018年度 》

2018.6

『スキップ』

北村 薫著/新潮社
1995年発行/913.6 キ


 6月10日は「時の記念日」です。西暦671年のこの日、日本で初めて、天智天皇が設置した水時計が時を打ち、民に時を知らせた日だからとされています。天智天皇が祀られている大津市の近江神宮では、今も毎年この日に「漏刻祭」が行われています。「時の記念日」が定められたのは、1920年ですが、その意図は「時間を守る 時間を大切にする」というもので、生活改善同盟が制定したものでした。人は、特に現代人は、日々の生活の中でこの時間に縛られて生活しています。でも一方で、人は古くから「時」にいろいろな思いを託し、その不思議さを感じてきました。そして、「時」にまつわる多くの文学作品も生まれました。今回ご紹介する本もそのような本の一冊です。
 主人公は17歳の一ノ瀬真理子。大雨で高校の運動会が途中で中止になった9月のある日、家に帰ってレコードを聴いているうちに眠ってしまいます。そして、目覚めた時、真理子は42歳の桜木真理子になっていました。夫と17歳の娘がいる高校の国語の教師。25年の時を「スキップ」してしまったのです。戸惑いや哀しみなど様々な感情が渦巻く中、それでも真理子は前を向き、17歳のこころを抱えたままで、42歳の桜木真理子としての生活をこなしていきます。そんな真理子の姿は夫と娘にも影響を与え、最初は記憶を失っているとしか思えなかった二人も、真理子は本当に「時を跳んで」きたのだと思えるようになります。そして、できれば元の世界に返してあげたいとまで思うようになるのです。
 この作品は作者によって「時と人」と名付けられたシリーズの一作目です。時を繰返す『ターン』、そして『リセット』とともに三部作となっていますが、それぞれが別の作品です。1995年の発行以来、多くの人に読まれ、「新潮文庫の100冊」にも何度も選ばれている作品です。

(へろへろ隊員 ひらい)

2018.5

『恋の相手は女の子』

室井舞花 著/岩波書店
2016年発行/367.9 ム

 近年、世界的にセクシュアルマイノリティに関する意識が高まっています。日本でも学校の授業の中で教えたり、自治体や一般企業で講習が行われているところもあります。LGBTという用語も一般的になり、新聞や雑誌で目にすることも増えました。しかし、セクシュアルマイノリティの人の歩んできた人生について、じっくり話を聞いたことはない人も多いと思います。

 この本の著者の室井舞花さんは、女性を好きになる女性です。この『恋の相手は女の子』は、室井さんの幼少時代から同性のパートナーと結婚式を挙げるまでを綴った本です。
 自分が同性愛者だと気付いた中学生時代。周りとは違うということに恐怖を抱いたそうです。相談できる相手もいない、調べる手段も勇気もない―。室井さんは自分自身を抑制し、同性が好きであることを必死で隠して生活するようになりました。
 大学生になり世界一周の船旅に参加した時、室井さんに転機が訪れます。航海中に船内で行われるイベントで、同い年の女性が「私は同性愛の当事者です」とカミングアウトしたのです。それをきっかけに、同性愛者である自分を認めることができたそうです。

 この本は、私たちは男や女である前に、一人の人間であることを思い出させてくれます。性別は、人間にいくつもある個性の中の一つに過ぎません。
 他人に自分の個性を認めてもらうには、まず自分自身を認めてあげることが大切です。そして他人のことも認めることができれば、自然と周りからも認めてもらえるようになるのです。
 自分が好きになれない、自分に自信が持てない、そんなあなたにほんの少し勇気をくれる一冊です。

(へろへろ隊員 しばた)

2018.4

『マルカン大食堂の奇跡』

北山公路著/双葉社
2017年発行/673.97 キ


 巨大ソフトクリームと、わくわくした表情で口を大きく開け、ソフトクリームを食べようとしている少女。
 おいしそう!そして幸せそう!
 表紙からはそんな気持ちが伝わってきます。

 岩手県花巻市にある地元民に愛されているマルカンデパート大食堂。昭和レトロな雰囲気と、25cmもある巨大ソフトクリームが名物で、観光地としても愛されているマルカンデパート大食堂が、建物の老朽化などにより、2016年6月7日に閉店することが発表されました。
 著者を含め、岩手県民、マルカンデパート大食堂ファンたちに激震が走ります。
 そこで立ち上がったのが、岩手県立花巻北高校の女子生徒。周囲に相談し、仲間を集めて署名活動を始め、やがてその活動は大きく広がり、多くの署名が集まりました。その熱意を、同時期動き始めていた花巻家守舎が受け取り、マルカンデパート大食堂の復活に向けて歩んでいきます。
 グッズや写真集の作成、クラウドファンディングでの寄附受付など、あらゆる方法で活動を展開し、復活を目指します。
 本書では、その活動をつぶさに掲載していますが、なかでも感動し、どきどきしたのは高校生達の活動です。署名活動を通して、彼女たちは応援者ばかりでなく、反対する人、様々な意見をぶつけてくる人々にも出会います。中途半端な気持ちでは続けることができない程の活動を、それでも、彼女たちを応援してくれる先生や家族、友人たちに支えられてやり遂げます。
 こんな風に、地元を愛し、そのために考え、活動していける人生を歩める人はどれくらいいるのでしょうか?しかもそれを成し遂げたのは、ごく普通の高校生です。
 彼女たちも悩みながら活動していました。復活を検討していた花巻家守舎もぎりぎりまで悩みながら検討を続け、決断まで走り続けました。彼女たちの原動力は、地元とマルカンデパート大食堂への想いです。その想いを形にする力は、おそらく誰にでもあるのだと思います。特別な人間でなくても、はじめの一歩を踏み出すことができれば、そしてそれを続けることができれば、何かを成し遂げることができるのではないでしょうか。
 彼女たちの活動の記録には、そう思わせてくれるパワーがあります。そのパワーに、ぜひ触れてみてください。きっとその力を信じることができるでしょう。
 それと同時に、こうも思うのではないでしょうか。
 「マルカンデパート大食堂の巨大ソフトクリームが食べたい」と。

(へろへろ隊員 やまだ)