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へろへろのおすすめ本

へろへろのおすすめ本
図書館に時々出没するかえるのへろへろ。
住処は大学横の田んぼだという噂(田村山とも!?)。
ふらりとやってきては豆知識をつぶやくのが趣味なのだとか。
図書館公式キャラクターであるへろへろ隊長のもと、隊員である司書が本をおすすめしていく。
おすすめ本はカウンターにあります。
《 2018年度 》

2018.10

『チョコレートの歴史物語』

サラ・モス,アレクサンダー・バデノック著,堤理華訳
原書房/2013年発行/383.8 モ

 秋から冬にかけて、日本ではたくさんの種類のチョコレートが店頭に並びます。シンプルなものからこだわりのものまで、安価なものから高価なものまで、様々な種類のチョコレートが次々と販売され、私たちを楽しませてくれます。
 日本チョコレート・ココア協会によると、昨年の日本国内のチョコレート製品生産量は、なんと240,992,061kg。おおよそ24万トンのチョコレート製品が作られ、販売されたのです。日本国内だけでも、チョコレート製品がとても愛されているのがよくわかります。そんな風に、今では世界的にどの国でも楽しまれ、親しまれているチョコレートですが、その歴史について、みなさんはご存じでしょうか?

 チョコレートがカカオから作られることは多くの人が知っていると思います。そのカカオの木は、赤道20度以内、年間の温度・湿度が一定に保たれる地域で育ちます。最適な繁殖環境は熱帯雨林の土壌で、収穫の際も身を傷つけないように丁寧に切り落とされます。収穫後は高温で乾燥させ、様々な手法で私たちの知るチョコレートの形に加工されるのです。

 最古のカカオが付着した土器が出土したのはマヤ文明の遺跡で、マヤ人がカカオを用いていたという実物の痕跡も記録されています。マヤの壺には、チョコレートの収穫、調理法、使用法が描かれており、飲み物として愛用されていました。また、カカオは、埋葬や婚礼、慰霊などの宴にも捧げられていたことも絵文字から読み解くことができるそうです。
メソアメリカ(メキシコや中央アメリカ北西部などで高度に繁栄した文明を持つ地域)では、カカオ豆を貨幣として用い、アステカでは貯蔵資産としての役割を持っていました。また、加工したチョコレートは薬としても利用され、ヨーロッパ上陸後は、上流階級の嗜好品として愛用されました。

 このように、時を経て世界中に広がっていったカカオ豆とチョコレートは、現代の私たちにとって身近な嗜好品または贅沢品として愛されています。日本でも、チョコレートビジネスにより、たくさんの種類のチョコレートが生み出され、私たちを楽しませてくれます。
 今年も新商品が出そろう冬がやってきます。
 ぜひ、美味しいチョコレートを味わいつつ、本書でチョコレートの歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

(へろへろ隊員 やまだ)

2018.9

『AI vs.教科書が読めない子どもたち』

新井 紀子著/東洋経済新報社/2018年発行/007.13 ア

 AI(人工知能)は、最近あちらこちらで取りあげられ、どこまで進歩しているのか、今人間がしていることは将来どこまでAIに代替されるのか、など、様々な議論もなされています。
 そのような中で、この本は、AIと人間はどこが違うのか、AIの限界と、人間にしかできないことは何なのかを豊富な実験データをもとに示し、今年度の山本七平賞を受賞しました。
 著者は、国立情報学研究所で人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」を2011年に立ち上げ、「東ロボくん」と名付けた人工知能を「我が子のように育て」東大合格を目指すチャレンジを七年間続けています。しかし、その目的は「AIにはどこまでのことができるようになって、どうしてもできないことは何かを解明すること」だとしています。そして、「もちろん、AIが東大に合格する日はやってこないでしょう」といいます。それは、「AIはコンピュータであり、コンピュータは計算機であり、計算機は計算しかできない」から。
 プロジェクトの現在までの結論は、現在人間がしている多くの仕事がAIに代替されるようになったとしても、高度な読解力と常識、そして人間らしい柔軟な判断力が必要とされる仕事は人間にしかできない、ということです。
 この結論から、著者が次に検証しようとしたのは、現在の中高校生の読解力でした。そのため、全国2万5000人に基礎的読解力の詳細な調査を行うのですが、そこで恐るべき結果が出てきます。「日本の中高校生の読解力は危機的と言ってよい状況にあり」、「その多くは中学校の教科書に記述を正確に読み取ることができていません」というのです。
 この結果を私たちはどのように受け止めればいいのでしょうか。
 これからの社会を担っていく人、これからの社会を生きる子どもたちに関わる人にぜひ読んでいただきたい本です。また、「東ロボくん」プロジェクトに興味のある人、子どもの読解力を考えたい人にもお薦めです。

(へろへろ隊員 ひらい)

2018.8

『プロに教わる 1秒で心をつかむPOPの作り方』

パイインターナショナル/2017年発行/674.53 フ

 スーパーや書店、雑貨屋、カフェなど、いろんなお店で見かけるPOP。可愛くデコってあるもの、オシャレな飾り文字で書かれているもの、カラフルなイラストが描かれているもの。お客様の目を引くため、様々な工夫が凝らされています。思わず足を止めちゃう面白いPOPの秘密…知りたくないですか?

 そもそもPOPとは何でしょう。POPとは、いわば広告です。商品の魅力を効果的にお客様に伝えて、「買ってみよう」という気持ちにさせるためのものです。
 この本では、実際にお店で使われているPOPを紹介しつつ、プロの販売員がPOPづくりのコツを教えてくれます。ほぼ全ページ写真・イラスト付きなので、作業の流れやポイントなどが一目瞭然。とてもわかりやすくなっています。ユニークなPOPがたくさん出てくるので、眺めているだけでも十分に楽しめます。

 「字が下手だから」「イラストなんて描けない」という人でも大丈夫。文字は手書きじゃなく、パソコンなどで打ったものでもOK!イラストがダメなら、写真をつけてみるのもOK!お客様に魅力が伝われば、何でもアリです。
 「アイデアが出ない」「センスに自信がない」という人もご安心ください。合計48ページにわたって、デコ文字やモチーフの例が豊富に掲載されているんです。これらを参考にパターンを組み合わせれば、あっという間にPOPの出来上がりです。

 この本を読めば、POPづくりにハマっちゃうこと間違いなし!POP・本の帯コンクールでも優勝を狙えるかも…!?ぜひぜひ、手に取ってみてください!

(へろへろ隊員 しばだ)

2018.7

『デザイナーのための著作権ガイド』

赤田繁夫他著/パイ インターナショナル
2010年発行/021.2 ア

 許諾を得ずに撮った動物の写真、広告に使うのはアリ?
 有名な画家の絵を、許諾を得ずに広告に使うのはオッケー?

 何気なく撮った写真や、お気に入りのイラスト、お気に入りの人物などを加工してちらしやポスターなどを作ることってありますよね?広告だけではなく、講義の資料や発表資料など、日々、様々な場面で様々なものを作ることがあると思います。そんな時、例えばインターネットで見つけた画像を使ったり、誰かの文章を使いたいと思ったら、まずは著作権を意識することが大切です。

 そもそも、著作権とは一体なんでしょうか?
 著作権法とは、「著作物並びに実演、レコード、放送および有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の校正な利用に留意しつつ、著作物等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的」とした法律です。
 著作物とは、文芸や学術、美術または音楽の範囲に属する作品として思想または感情を創作的に表現したもののことをいいます。
 例えば、幼児が描いた絵であっても、それはひとつの著作物となります。
 それがどんなにすばらしい物で、善意からみんなに見せるために使用したのだとしても、使用する際は許諾を得ることが必要です。

 本書では、広告デザインに特化していますが、様々な判例を元に著作権についてわかりやすく説明をしています。見開き2ページに例題と回答、また関連した事項について簡潔にまとめられていて、状況に合わせて調べることができ、大変便利です。また、著作権だけでなく、肖像権にも触れていますので、SNSなどでの利用についても、どこまでが大丈夫なのか、きちんと知識を得ることができます。
 手軽に様々な事が発信できる現代だからこそ、普段から著作権や肖像権を意識し、その上で自由に表現していきたいものです。

(へろへろ隊員 やまだ)

2018.6

『スキップ』

北村 薫著/新潮社
1995年発行/913.6 キ


 6月10日は「時の記念日」です。西暦671年のこの日、日本で初めて、天智天皇が設置した水時計が時を打ち、民に時を知らせた日だからとされています。天智天皇が祀られている大津市の近江神宮では、今も毎年この日に「漏刻祭」が行われています。「時の記念日」が定められたのは、1920年ですが、その意図は「時間を守る 時間を大切にする」というもので、生活改善同盟が制定したものでした。人は、特に現代人は、日々の生活の中でこの時間に縛られて生活しています。でも一方で、人は古くから「時」にいろいろな思いを託し、その不思議さを感じてきました。そして、「時」にまつわる多くの文学作品も生まれました。今回ご紹介する本もそのような本の一冊です。
 主人公は17歳の一ノ瀬真理子。大雨で高校の運動会が途中で中止になった9月のある日、家に帰ってレコードを聴いているうちに眠ってしまいます。そして、目覚めた時、真理子は42歳の桜木真理子になっていました。夫と17歳の娘がいる高校の国語の教師。25年の時を「スキップ」してしまったのです。戸惑いや哀しみなど様々な感情が渦巻く中、それでも真理子は前を向き、17歳のこころを抱えたままで、42歳の桜木真理子としての生活をこなしていきます。そんな真理子の姿は夫と娘にも影響を与え、最初は記憶を失っているとしか思えなかった二人も、真理子は本当に「時を跳んで」きたのだと思えるようになります。そして、できれば元の世界に返してあげたいとまで思うようになるのです。
 この作品は作者によって「時と人」と名付けられたシリーズの一作目です。時を繰返す『ターン』、そして『リセット』とともに三部作となっていますが、それぞれが別の作品です。1995年の発行以来、多くの人に読まれ、「新潮文庫の100冊」にも何度も選ばれている作品です。

(へろへろ隊員 ひらい)

2018.5

『恋の相手は女の子』

室井舞花 著/岩波書店
2016年発行/367.9 ム

 近年、世界的にセクシュアルマイノリティに関する意識が高まっています。日本でも学校の授業の中で教えたり、自治体や一般企業で講習が行われているところもあります。LGBTという用語も一般的になり、新聞や雑誌で目にすることも増えました。しかし、セクシュアルマイノリティの人の歩んできた人生について、じっくり話を聞いたことはない人も多いと思います。

 この本の著者の室井舞花さんは、女性を好きになる女性です。この『恋の相手は女の子』は、室井さんの幼少時代から同性のパートナーと結婚式を挙げるまでを綴った本です。
 自分が同性愛者だと気付いた中学生時代。周りとは違うということに恐怖を抱いたそうです。相談できる相手もいない、調べる手段も勇気もない―。室井さんは自分自身を抑制し、同性が好きであることを必死で隠して生活するようになりました。
 大学生になり世界一周の船旅に参加した時、室井さんに転機が訪れます。航海中に船内で行われるイベントで、同い年の女性が「私は同性愛の当事者です」とカミングアウトしたのです。それをきっかけに、同性愛者である自分を認めることができたそうです。

 この本は、私たちは男や女である前に、一人の人間であることを思い出させてくれます。性別は、人間にいくつもある個性の中の一つに過ぎません。
 他人に自分の個性を認めてもらうには、まず自分自身を認めてあげることが大切です。そして他人のことも認めることができれば、自然と周りからも認めてもらえるようになるのです。
 自分が好きになれない、自分に自信が持てない、そんなあなたにほんの少し勇気をくれる一冊です。

(へろへろ隊員 しばた)

2018.4

『マルカン大食堂の奇跡』

北山公路著/双葉社
2017年発行/673.97 キ


 巨大ソフトクリームと、わくわくした表情で口を大きく開け、ソフトクリームを食べようとしている少女。
 おいしそう!そして幸せそう!
 表紙からはそんな気持ちが伝わってきます。

 岩手県花巻市にある地元民に愛されているマルカンデパート大食堂。昭和レトロな雰囲気と、25cmもある巨大ソフトクリームが名物で、観光地としても愛されているマルカンデパート大食堂が、建物の老朽化などにより、2016年6月7日に閉店することが発表されました。
 著者を含め、岩手県民、マルカンデパート大食堂ファンたちに激震が走ります。
 そこで立ち上がったのが、岩手県立花巻北高校の女子生徒。周囲に相談し、仲間を集めて署名活動を始め、やがてその活動は大きく広がり、多くの署名が集まりました。その熱意を、同時期動き始めていた花巻家守舎が受け取り、マルカンデパート大食堂の復活に向けて歩んでいきます。
 グッズや写真集の作成、クラウドファンディングでの寄附受付など、あらゆる方法で活動を展開し、復活を目指します。
 本書では、その活動をつぶさに掲載していますが、なかでも感動し、どきどきしたのは高校生達の活動です。署名活動を通して、彼女たちは応援者ばかりでなく、反対する人、様々な意見をぶつけてくる人々にも出会います。中途半端な気持ちでは続けることができない程の活動を、それでも、彼女たちを応援してくれる先生や家族、友人たちに支えられてやり遂げます。
 こんな風に、地元を愛し、そのために考え、活動していける人生を歩める人はどれくらいいるのでしょうか?しかもそれを成し遂げたのは、ごく普通の高校生です。
 彼女たちも悩みながら活動していました。復活を検討していた花巻家守舎もぎりぎりまで悩みながら検討を続け、決断まで走り続けました。彼女たちの原動力は、地元とマルカンデパート大食堂への想いです。その想いを形にする力は、おそらく誰にでもあるのだと思います。特別な人間でなくても、はじめの一歩を踏み出すことができれば、そしてそれを続けることができれば、何かを成し遂げることができるのではないでしょうか。
 彼女たちの活動の記録には、そう思わせてくれるパワーがあります。そのパワーに、ぜひ触れてみてください。きっとその力を信じることができるでしょう。
 それと同時に、こうも思うのではないでしょうか。
 「マルカンデパート大食堂の巨大ソフトクリームが食べたい」と。

(へろへろ隊員 やまだ)